翌朝、仲間たちの前に姿を現わした瞬からは、昨日の死に瀕した人間のような様子は すっかり消えてしまっていた。 血色の戻った頬は薔薇色に上気し、乾き かさついていた唇は やわらかく艶やか、髪の毛の先までが生気を帯びて明るく輝いている。 何よりも半死人のそれのようだった瞬の瞳が、今朝は眩しいほどのきらめきを たたえていた。 たった一晩で、人はこれほどまでに変貌するものかと、星矢は心の底から感嘆してしまったのである。 「ったく、氷河の奴、どんだけ荒療治したんだか」 おそらく、昨夜、瞬は ほとんど眠っていない。 にもかかわらず、今朝の瞬の あふれ弾けるような この生気、精気、活気、熱気。 星矢は、氷河の手腕に恐れ入るしかなかったのである。 キリスト教を徹底的に批判し、終生 古代ギリシャに憧れ続けたフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは、『肉体は一つの大きな理性である』と言っている。 肉体の声に逆らう行いは、おそらく 賢明な人間のすることではないのだ。 Fin.
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