そうして瞬王子は、兄君に守られて火の国に帰ったのですが、それで すべてが一件落着とはなりませんでした。
他でもない氷河王子のせいで。
瞬王子との恋の成就こそが 自分が幸せに至る唯一の道と確信した氷河王子は、火の国にまで瞬王子を追いかけてきてしまったのです。
「俺は、おまえのどんな願いも叶えると約束したんだ。約束を守りたい。頼む、俺の恋人になりたいと望んでくれ。俺は、一生 おまえだけを愛すると誓う!」
「そ……そんなこと言われても……」
氷河王子は、望んだ答えを手に入れるまでは梃子てこでも瞬王子の側を離れるつもりはないようでした。
一輝国王の苦情を聞いたカミュ国王からの帰国命令も完全無視して、氷河王子は 毎日 瞬王子につきまとい、どんなに自分が瞬王子を愛しているのかを切々と訴え続けました。

「おまえなしで 俺の幸せはありえない! 俺の幸せは おまえの瞳の中にしかないんだ! 頼むから、俺のものになりたいと望んでくれ!」
「あ……」
瞬王子は、大好きだった氷の国の王妃様に約束しました。
氷の国の王妃様の分も 氷河王子を幸せにすることを。
そうすることが、自分の夢であり、生きる目的であり、一生の務めだと、幼い頃からずっと 瞬王子は信じていたのです。
けれど、そういう やり方で氷河王子を幸せにすることは これまで一度も考えたことがなかったので、瞬王子は迷い悩まないわけにはいきませんでした。


瞬王子は とても困っています。
今でも とても困っているようです。
とても困っているのですが――でも、最近は、氷河王子に『愛している』と言われると、瞬王子の頬は自然に上気するようになってきたみたい。
もしかしたら瞬王子は、そのうち 氷河王子の熱意(と根性)に負けて、『僕を氷河の恋人にしてください』と、氷河王子に お願いしてしまうかもしれません。






Fin.






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