瞬は、兄を信じている。
そして、もちろん、兄を騙しているとか、兄に隠しごとをしているという自覚もない。
正式な お付き合いの許しなど、相手が氷河であれば不必要だと、瞬は 信じきっているのだ。
瞬の瞳は人を疑うことを知らず澄み切っており、瞬の心は 罪を知らず清澄そのもの。
敬愛する兄に対しては あくまで従順、弟に注がれる兄の愛の深さ正しさ強さに感謝し、その期待を裏切ることなど考えたこともない。
それは、瞬もまた、一輝同様、自分の兄を深く愛しているからである。


『地上で最も清らか』
誰が最初に 瞬を そう評したのか、それは今となっては誰にもわからない。
その誰かが神だというなら話は別だが、そうでないのなら、もちろん それは根拠のない憶測にすぎず、神ならぬ身の人間には、瞬を“地上で最も清らか”な人間だと断じることはできない。
無論、神ならぬ身の人間には、絶対にそうではないと断じることもできないのだ。






Fin.






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