日本一の規模を誇るナレッジコミュニティの掲示板に、ファンを自称してネット小説の作者の連絡先を知りたいという相談の記事を投稿したのが、問題のネット小説を執筆した氷河自身だったこと。
小説の執筆者の写真をネット上に流したのが その写真に写っている氷河当人だったこと。

沙織の調査によって、それらの事実が判明したのは、グラード財団のサーバーダウン騒動の日から1ヶ月が過ぎた夏の終わり。
アブラゼミやミンミンゼミが そのシーズンの活動を終え、日暮れにヒグラシの声が響くようになった頃だった。
その段になって、氷河の仲間たちは、氷河の真の意図を知ることになったのである。
すなわち、氷河は、“ぼんやり”“ぽつねん”状態から脱出するために 小説を書き始めたのではなかったのだということを。
彼は、『瞬が自主的にボランティア活動を控える状況を作る』という明確な目的のために、策を練り、計画を立て、立てた計画を着実に実現すべく まずたゆまず努力を続け、見事に その目的を果たしたのだ。

趣味が愛の男は、愛のためなら何でもするのである。






Fin.






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