「ハーデス様」 冥界の薄闇に、冥府の王の気配。 冥府の王の魂は、これまでになく高揚していた。 一刻も早く 時が満ちることを願って。 瞬と再会できる時を待ち望んで。 「瞬は、余が思っていた以上に 清らかで強い。清らかなだけだった、これまでの器とは全く違う。余は、大いに瞬が気に入った。パンドラ。そなたも あれが気に入ったのであろう」 「それは もちろん。清らかなだけでなく、強く 聡明。ハーデス様の魂の器として ふさわしい人間だと思います。ただ――」 これが冥府の王の戦い方。 ハーデスの僕である人間が とやかく言うことは 許されない。 それはわかっている。 だが、パンドラの胸中は ひどく複雑だった。 「ただ、あの強さと聡明。何かが――何かが起きるような気がしてなりません」 アテナの聖闘士である、冥府の王の魂の器。 これまでの聖戦とは違う聖戦が始まる。 おそらく、きっと、これまでの聖戦とは違う何かが起きる。 それが良いことであるように――ハーデスにとってではなく、瞬にとって良いことであるようにと願っている自分に、パンドラは少し困惑していた。 Fin.
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