あの日以来、ずっと耐えてきた。
星矢に言われた通り、“大人”だから――“大人”でいようとして。
謝れば、同じ目的のために戦う同志を憎むことを 懸命に耐えてきたアンドロメダ座の聖闘士の思いが水泡に帰してしまうのだ。
ひたすらに耐えることは、単純で無雑な正義漢である蠍座の黄金聖闘士には 途轍もない苦難だった。
過ちを犯したカノンに 禊を与えてやりながら、自らの罪を贖う機会を持てるカノンを幸運な男だと羨んだ。
カノンを責めながら、誰か俺を責めてくれと、希求していた。
だが、その苦い時間も やっと終わる。

アテナの聖闘士たちの前に立ちはだかる嘆きの壁。
やっと罪を贖うことができるのだ。
それも、仲間たちと共に。
自分が笑って死んでいくことができるのは、あの青銅聖闘士たちのおかげだと思う。
ミロは、あの“子供”たちに感謝していた。

常に希望の光に輝き、まっすぐに愛を信じている若き聖闘士たち。
愛の強さ、希望が叶う未来を信じることのできる彼等は、大人の振りをして それらを信じない大人たちより 更に強い大人なのだ。
彼等は、必ず、地上の平和を守り抜くだろう。
疑いなく、迷いなく、そう信じることができる。
だから、希望の中で死んでいけるのだ。
彼等のために、彼等の進むべき道を作って。

幾つもの過ちを犯した。
大抵の人間がそうであるように、後悔はある。
だが、今は。

今は――今この最期の瞬間にさえ、蠍座の黄金聖闘士は、自分が希望を抱き 希望の光の中に在ることを感じることができているのだ。
悪くない人生だったと、ミロは思った。






Fin.






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