紫龍おじちゃんと星矢おにいちゃんは、パパをトンマだと言う。
マーマは、そのどちらとも答えてくれない。
パパは かっこいいのか、トンマなのか。
ナターシャは、その大問題の答えを他の人に訊いて確かめるしかないと思った。
それで、紫龍おじちゃんがパパをトンマと言った日から数日後、吉乃に会った際、ナターシャは 早速 彼女に訊いてみたのである。

「ヨシノー。ヨシノは、ナターシャのパパのこと、かっこいいと思う?」
吉乃は、どうしてナターシャが そんなことを訊いてくるのかを不思議に思っている様子で、
「ナターシャちゃんのパパは、滅茶苦茶 かっこいいでしょ。ちょっと、素っ気なくて、冷たい感じがするけど、綺麗だし、強いし。あんな かっこいいパパと綺麗なマーマがいたら、誰だってナターシャちゃんのこと、羨ましがると思うよ」
という答えを、ナターシャに返してきた。
吉乃は、マーマのように 答えをはぐらかすことはしなかった。
やっと自分以外にも パパをかっこいいと言ってくれる人に出会えたのだから、ナターシャは、やっぱりパパはかっこいいのだと安心できるはずだった。
しかし、事は そう簡単には運ばなかったのである。
吉乃の答えは、ナターシャに別の謎を運んできたのだ。

マーマを除けば、この世界に パパより優しい人はいないと、ナターシャは思っていた。
だというのに、吉乃は、パパを“冷たい”と言う。
「パパは冷たくなんかないのに……」

どうして一人の人に対して、こんなにも皆の言うことが違うのだろう。
ナターシャは、それが不思議でならなかった。
いったい パパは かっこいいのか、トンマなのか。
パパは優しいのか、冷たいのか――。
謎が謎を呼ぶ、奇妙な事態。
その日から、パパの真実の姿を見極めようとするナターシャの“パパの観察”が始まったのだった。






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