眠っている間、瞬は不思議な夢を見ていた。
氷河と同じ青い瞳。長い金髪の大人の女の人が、瞬の頬にキスをした。
「よかった。これで、安心だわ。瞬ちゃん、あの子をお願いね」
その人の声は、瞬が水の中で聞いた氷河のマーマの声。
その姿は、瞬が想像していた通りに綺麗で、そして、彼女は とても優しい目をしていた。
優しそうな その人が、まるで 憧れ羨むような眼差しを瞬に向け、口許に温かく切ない微笑を浮かべている。

「マーマ、パパはマーマがいないと だめだめだから、パパをよろしくダヨ!」
そして、強くて偉い神様の お使い(のはずの)ナターシャの声。
相変わらず 何を言っているのか わからない。
そして、相変わらず ナターシャの笑顔は明るく、ナターシャの声は元気いっぱいだった。
彼女は、その小さな手で、瞬の頬を撫でた。

「あ……」
「いつまでも、あの子と一緒にいられるあなたが羨ましいわ。私は、あなたに生まれたかった」
「マーマ。パパをずっと守ってあげられるのは、マーマだけなんダヨ。マーマ、パパをお願いダヨ!」
氷河のマーマは亡くなったのではなかったのか。
氷河を『パパ』と呼ぶ、この小さな女の子は何者なのか。
彼女の言う『マーマ』は自分なのか。
訊きたいこと、確かめたいことは いくらでもあったが、今は彼女たちの願いを叶えてあげたい。

『あの子を幸せにしてあげて』
『パパの幸せを守ってダヨ』
彼女等は、ひたすら氷河の幸せを願っている。
「はい。必ず」
瞬が頷くと、彼女等は嬉しそうに微笑んだ。






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