11月17日

パパの はつこいの おはなしをきいたよ。
パパが まだちいさかったころのおはなしだよ。
パパは、マーマがいなくなって、ひとりぽっちで にほんにつれてこられて、こころぼそくて、でも、すごくきれいでかわいいおんなのこにあって、やさしくしてもらった。
そのこは、すごくなきむしだったんだって。
パパはずっと なくのをがまんしてて、からだのなかが なみだでいっぱいになって、きがゆるむと あふれちゃいそうだったから、ずっとむっとして、くちもきかずにいた。

そのおんなのこは、パパがくるしいのにきづいて、みんなに かくれて、ふたりでなこうって、いってくれたんだって。
それで、パパとなきむしのおんなのこは、さおりさんのおうちの おにわのおくの ひみつのばしょにいった。
おんなのこは、
「ヒョウガはマーマがだいすきだったんだね」
っていって、パパをだきしめて、パパはいっぱいないて、ふたりでいっぱいないて、それで、パパは くちがきけるようになった。

それくらい、パパは パパのマーマがだいすきだったから、だから ナターシャもマーマがほしいかもしれないっておもったんだって。
ナターシャは、パパがいれば それでいいのに。
シュンちゃんがいるから、ママなんていらないのに。
ナターシャが そういったら、パパは、なんだか へんなかおになって わらった。
わらったんだとおもう。

その なきむしのおんなのこは、ナターシャよりかわいかったのかな。
それがきになって、パパにきいたら、パパは、
「どうかなあ」
って。
「いま、せかいでいちばんかわいいおんなのこはナターシャだけど、こどものころのシュンは、はなのようせいのようだったから」
って。

パパのはつこいのひとって、シュンちゃんだったんだ。
ナターシャは、パパのはつこいのひとが、ほかにいなくてよかったって おもったよ。


11月18日

どうして パパはシュンちゃんとけっこんしなかったの? って、ナターシャ、ゆうきをだして、パパにきいてみたの。
かっこいいおうじさまと きれいなおひめさまは、ふつう けっこんするでしょ。
それで、いつまでもいつまでも しあわせにくらすんだよ。
なのに。
ナターシャがきくと、パパは すごくすごーく、こまったみたいなかおになった。
ナターシャ、きかないほうがよかったのかな? って、しんぱいになっちゃった。

でも、パパはおしえてくれたよ。
パパがシュンちゃんとけっこんしなかったのは、シュンちゃんが アテナのせいんとになっちゃったからなんだって。
パパもアテナのせいんとなんだから ちょうどいいのにって、ナターシャはおもったけど、そうじゃなかったみたい。
アテナのせいんとになったシュンちゃんは、せかいのへいわが いちばんだいじになったんだって。
パパより、じぶんより、せかいのへいわ。
パパより、じぶんより、じんるいぜんぶのしあわせ。

だから、パパはシュンちゃんとけっこんできなかったんだって。
でも、ナターシャは、そんなの へんだとおもう。
ナターシャも せかいのへいわをまもりたいけど、すてきなおうじさまとは けっこんしたいもん。
でも、パパは、ナターシャは だれともけっこんしなくていいって。
ずっとパパといっしょにいればいいって。
ナターシャも、パパよりかっこいいおうじさまでないと、けっこんなんかしないよ。
ナターシャがそういったら、パパは、
「なら、あんしんだ」
って。

それから、パパは、シュンちゃんの おにいちゃんのことを、ナターシャに おしえてくれた。
シュンちゃんのおにいちゃんが、パパはだめだっていって、シュンちゃんとパパのじゃまをしたんだって。
パパとシュンちゃんがなかよしでいるのを、ものすごく だいはんたいしたんだって。
どうしてだめだったんだろう。
パパはすごくかっこいいのに。
きっと、シュンちゃんのおにいちゃんより かっこいいのに。
ナターシャは、すごくふしぎだよ。


11月19日

きょうは、パパのはつこいのはなしのつづきをきいたよ。
パパとシュンちゃんの はつこいのおはなしは、しらゆきひめや しんでれらひめのおはなしより すてきだと、ナターシャはおもう。
しらゆきひめや しんでれらひめのおはなしは、おうじさまたちが さいごにちょっと でてくるだけで、つまらないんだよ。
おうじさまが たたかわないし、ぼうけんもしない。
パパとシュンちゃんのおはなしは、パパもシュンちゃんも いっぱい かつやくするから、すごくたのしいんだよ。

パパはぶらっくせいんととの たたかいのとき、シュンちゃんを わるものからたすけてあげたんだって。
それで、せいいきのたたかいのときは、シュンちゃんにたすけてもらったんだって。
パパのせんせいに こおりづけにされたパパを、シュンちゃんはいのちをかけて いきかえらせてくれた。
ナターシャがいま、パパといっしょにいられるのは シュンちゃんのおかげなんだよ。

パパはシュンちゃんにいのちをたすけてもらって、ますます シュンちゃんがだいすきになって、シュンちゃんいがいのコイビトはいらないっておもうようになったんだって。
パパはいまでもシュンちゃんに はつこいしてるんだよ。
シュンちゃんはアテナのせいんとだけど、でも だからって あきらめられない。
パパはシュンちゃんを あきらめられない。
パパはシュンちゃんを いまでも、いつまでも、あいしてるんだって。

パパのしあわせは、シュンちゃんとコイビトどうしになることなんだよ。
それで、ナターシャのしあわせは、パパがしあわせでいることだよ。
だから、ナターシャは、パパをしあわせにする。
シュンちゃんをパパのコイビトにして、ナターシャのマーマにするんだよ。
パパとナターシャが さいこうにしあわせになるには、それしかない。

シュンちゃんなら、きれいだし、おりこうだし、やさしいし、つよいし、せかいいちのマーマになってくれる。
ナターシャが そういったら、パパはびっくり。
シュンちゃんをナターシャのマーマにすることを、これまで パパは かんがえたことがなかったんだって。
でも、シュンちゃんより じょうとうのマーマはいないし、ナターシャはシュンちゃんがいいよ。
シュンちゃんは、こうえんであった へんなおんなのひとみたいに、パパとナターシャのじゃましないもん。

シュンちゃんは、ナターシャに、パパが どんなおんなのこをすきか、おしえてくれる。
パパは、じぶんのことしかかんがえないこがきらい。
いじわるするこもきらい。
こまってるひとをたすけてあげるこがすき。
『やだ』より『はい』が いえるこがすき。
はみがきをちゃんとして、かおやてを きれいにしておくのがだいじ。
かおやてだけじゃなく、おへやや おようふくも、きれいにしておくのがいい。
パパはきれいずきなんだよ。
ひとも ものも きれいなものがすき。
こころは、かおや おようふくより、いちばんきれいにしておかなきゃならない。

パパがなにをすきなのかを、シュンちゃんが おしえてくれるから、ナターシャは、パパのかわいいナターシャでいられるんだよ。
ナターシャのマーマは、ぜったいシュンちゃんがいい。

パパとナターシャのいけんは、かんぜんいっち。
パパとナターシャは、シュンちゃんをパパのコイビトにして、ナターシャのマーマにするけいかくをたてることにした。
ナターシャ、なんだか、わくわくしてきたよ。






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