そこは、かなり広い部屋だった。調度は何もなく、椅子が数脚あちこちに置かれている。 銀色の壁に囲まれたその空間には十数人の男たちがいて、ある者は椅子に腰を降ろし、ある者は床に座っていた。年齢は30から50絡みまで。老人はいなかった。 髪の長い者もいれば、短く刈り込んでいる者もいたが、身にまとっているものはほとんどが麻で、ムスタバルやウルカギナのように絹を着けている者はいない。中には、獣の皮をなめして作った短衣を着ている者もいた。 瞬が室内に入ると、彼らの視線が一斉に瞬に注がれる。品定めをする商人のような目だった。 最も入口近くにいた王の一人が、ムスタバルに尋ねてくる。茶褐色の長い髪を背中で一つにまとめた、いちばん若そうな男だった。 「ムスタバル殿。そちらが本物の蛇で、ウルカギナ王が今日の祭儀で我等に披露なさろうとしているのが偽物だというのか?」 「はい。どのような乙女よりお美しく、清らかな瞳をしていらっしゃいますでしょう? 兄が蛇だと言っているのは、金や宝石で着飾らせたただの娘でございます」 白々しいほど恭しい身振りで、ムスタバルは瞬を部屋の中央へ行くように手で指し示した。 「美しさについては異論はないが、このお方が真実の蛇だという証拠は?」 「それを皆様方にお見せするために、恐れ多いことではございますが、わざわざここまで蛇にお運びいただきました。――瞬様」 ムスタバルが、王たちに何を示せと自分に促しているのか、瞬にはもうわかっていた。氷河を人質にとられている以上、ムスタバルに従うしかないのだということも。 全身からすべての血が失せてしまったように、瞬の身体は冷たく凍りついた。 |