ま、そんなふうにして、愛し合う二人は、やっと再び互いを互いと認め合うことができるようになったのですけれど。

「氷河……僕、いったい……」
「何も言うな。思い出してくれれば、それでいい」

――なんて、クサいセリフを言うと、氷河はそのまま第2ラウンドに突入してしまいましたの。
彼、あたくしというラスボスを倒すことなんて、すっかり忘れているようでしたわ。

まあ、あたくしには、それは好都合でしたけれどね。


その第2ラウンドも佳境に入り、また瞬が悩ましく喘ぎ始めた頃に、沙織嬢は、感動したように、あたくしに礼を言ってきましたわ。

様、今夜は、本当に結構なものを見せていただいて……。どうもありがとうございました。様の洗練されたご趣味には、感じ入るばかりですわ。私ったら、こんなに素晴らしい人材を手許に置きながら、どうして、こういう活用法に今まで思い至らなかったのか……。お恥ずかしい限りです」

成り上がりの小娘といえど、身の程をわきまえた人間は、あたくし、嫌いではありませんのよ。
沙織嬢の素直な感謝の言葉に、あたくしは、女王のごとく嫣然と優雅に頷き返しましたの。
「ほほほほほ。そんなことは、これから学んでいけばよろしいわ。そうね。次は、どんな趣向がよろしいかしら」

「あ、それでしたら、私、人材だけは豊富に取り揃えておりますので、黄金聖闘士たちの誰かに瞬を拉致させて、氷河を苦悩させてみるというのはいかがでしょう。後日、様に、候補者たちの顔写真を一式、お届けにあがります」
「まあ、沙織ったら、飲み込みが早くていらっしゃること」
「それもこれも、様のご指導ご鞭撻のおかげですわ」

沙織嬢は、確かに、上流階級の水に合った令嬢のようですわね。
ひとしきり談笑をして、幾度もあたくしに礼を述べてから、彼女はあたくしの屋敷を辞していきましたわ。






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