あたくしは、彼女を見送ると、もう一度、氷河と瞬の映るスクリーンの前に戻ってまいりましたの。 疲れ果てた二人は、スクリーンの中で、幸せそうに寄り添って眠っておりましたわ。 明日、早朝には、二人の記憶をリセットして、また別の設定を考えなくてはなりませんわね。 そういえば、沙織嬢の国・日本にも、あたくしと同じように風雅な趣味を持った高貴なご婦人が大勢いると、噂で聞いたことがありますわ。 なんでも、彼女たちは、この高貴な趣味を『やおい』と読んで、退屈な日々を紛らわせているとかいないとか。 彼女たちは、あたくしと同じ、選ばれた人間なのでしょうね。 氏素性はともかくも、その趣味は高貴で洗練されていて、いわば精神の貴族。 あたくしの今現在の野望は、いつの日にか彼女たちをこのウィーンに招き、シェーンブルン宮殿の大広間で、コミックマー○ットを開催することですの。 そして、多くの高貴な趣味の持ち主たちと、やおいについて語り明かすのですわ。 もちろん、その時には、今夜よりももっと過激でもっと素晴らしい映像を準備しておくつもりですのよ。 信じて貫けば、夢は必ず叶うと申しますわ。 まして、超高貴で超金持ちな欧州第一の美女である、このあたくし、お夫人の権力と財力と愛と情熱があれば、この世に叶わない夢などあるはずがございません。 その時のために、氷河と瞬には、これからもたっぷり頑張ってもらわなくては。 そして、もちろん、あなたも! その栄光の日のために、今のうちから、しっかり精進あそばしていてね。 合言葉は、『シェーンブルン宮殿で、お夫人と握手! やおいが見たかったら、シェーンブルンへいらっしゃい!』。 ああ、その時が本当に楽しみですわ! では、愛と栄光とやおいのその時まで、ご機嫌よう。 あたくしは、このへんで、優雅かつ高貴に退場いたしますわ。 おーっほっほっほっほっほ! Auf Wiedersehen
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