「あっ……!」

引き寄せて抱きしめた身体は、恐ろしく細かった。
こんな身体も出来ていないような子供が、あのブリッツを操っていたのだということを思い起こすと、戦争というものが無粋極まりないものに思えてくる。
この少年には、もっとふさわしい居場所があったはずだった。

「幽霊ではないようだな。身体が反応する」
シャツの中に忍び込ませたクルーゼの指に、ニコルが溜め息で応える。

「隊長が、そういう僕を望んだから」
「私が? 私は、あいにくと、この手の相手に不自由したことはない」
「心から抱きしめられる人と、それから、抱きしめてくれる人が欲しいって……思っていたでしょう? ああ……」

ニコルは、クルーゼの指のいたずらを拒む様子を見せなかった。
彼は、クルーゼの背にすがるように、自分から腕を回してきさえした。

「この私が? まさか」
ただ黙らせるために唇をふさぐ。

その唇が離れると、ニコルは、クルーゼの両の頬に手を添えて、
「隊長、こんなお顔をしてらしたんですね」
そう言って笑った。

今クルーゼの腕の中にいる小さな少年が、彼が見知っていた柔順で未成熟な少年でないことは確かだった。
生前の彼が、突然男に抱きしめられて、それを当然のことのように受け入れてしまえる少年だったとは思えない。
彼が、彼自身の言うように、クルーゼのためにそういうものになって、この世界に戻ってきたと言い張るのなら――。

「そのために在るというのなら、楽しませてもらうさ」
クルーゼは、自分の背にあるニコルの腕を引き離すと、その腕を掴みあげて、ニコルの身体を室内にあったベッドの上に放り投げた。
これが、本物のニコルなのか、あるいは何物かが仕掛けてきた罠なのか、確かめてやろうという意地の悪い考えもあった。






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