それでも──。



「生きて、帰ってきてくださいね」

クルーゼがニコルの側を離れるとき、ニコルはただその言葉を繰り返す。
この手を血に染めて帰ってきても、ニコルは、その罪人を許し、受け入れてくれるのだろう──素直にそう信じてしまえるような瞳をして。


ニコルのそのささやかな願いを叶えてやりたいと思っていた。
認めたくはなかったが、クルーゼの心のどこかで、それは彼自身の願いにもなっていた。

その願いは、だが、到底叶うものではなかった。






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