「じゃあ、二人して見ていましょうか、ここで」

そして、この卑小で心弱い人間を、結局この花は許してしまう──許してくれる──のだ。

この世界で、クルーゼの目に、ニコルは、人間の形をした幻影のように見えた。
あるいは、暖かく白い色をした光の球のように。
そして、小さな花のようにも。

それが、クルーゼの胸にそっと寄り添ってくる。
「生き残った人間たちが、僕たちの生きていた世界をどういうふうに変えていくのか、ここで。二人で」

「変えられぬかもしれないが」
クルーゼの声音には、少し皮肉の色が混じった。
死んでも、この癖は変えられないらしい。


「ええ、でも」

小さな花が、ほのかに微笑する。
その花の中から、もう悲しみの色は消えていた。


「見守っていきましょう。あれは……あなたの愛した世界だもの」






Fin.






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