「あなたたちには つらい思いばかりをさせてしまいましたね。許してください。しかし、あなたたちのおかげで、聖域にもこの地上にも、ようやく平和が戻りました――」
アテナが何やら言っている。
聖域での戦いは終わりを告げようとしていた。
満身創痍の身を黄金聖闘士たちに支えられ、女神の言葉を聞き流しながら、青銅聖闘士たちは 既に明日に視線を向けていた。
瞬の力で再生を果たした氷河が、いたって具体的な未来への展望を瞬に囁く。

「今夜から、夜だけでなく、朝も一緒に過ごそう」
ムウの手を借り、その身体を支えていた紫龍は、氷河のその言葉を半ば呆れながら盗み聞いていたのである。
さすがに瞬が惚れただけのことはある。
氷河もそうそう馬鹿な男ではなかったらしい。
瞬は明るい瞳で 嬉しそうな苦笑を洩らした。
「今夜は無理じゃない? 今日は僕たち、きっとこれから病院送りだよ」
「俺はできる」

自信満々の氷河の宣言を聞いた瞬の苦笑が、ぴたっと止まる。
瞳を見開いて氷河の顔を見詰めた瞬は、やがて薄く頬を染め、想定外に強くなってしまった氷河に困ったように 下を向いてしまった。
「氷河のエッチ!」
若い聖闘士たちの会話についていけなかったらしく、二人を支えていた黄金聖闘士たちの上体が、ぐらりと揺れた。






Fin.






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