瞬王子と氷河姫は、愛で勝ち取った平和をお土産に、チューリップ王国に帰ることができました。
一輝国王もパンドラ王妃も、二人の手柄をことのほか喜んで、『氷河姫は実は男なのでは?』という疑惑は、とりあえず追求しないでおくことにしたのです。
とにもかくにもそういうわけで、チューリップ王国には平和が戻ってきました。
それは、氷河姫と瞬王子の愛がもたらした平和です。

それからまもなく、チューリップ王国では、氷河姫が男装してヘラクレス城に乗り込み、瞬王子と共にチューリップ王国の危機を救うべく快刀乱麻の大活躍をしたらしいという噂が広がり始めました。
なにしろ、瞬王子は陰謀というものに非常に疎い人間でしたから、自分と氷河姫がヘラクレス国に行っている間、氷河姫の身代わりを立てる必要があるなどということには考えが及ばなかったのです。
いつもヴェールで素顔を隠している姫君とはいえ、一週間もの間 姿が見えなかったら、氷河姫の不在が周知のことになるのは当然のことでした。

か弱い女性の身でありながら、瞬王子を助けた救国の士として、氷河姫の評判はうなぎのぼり。
氷河姫の賢夫人としての名声は、チューリップ国内はおろか欧州中に広まり(ドクラテス王もカシオス姫もその噂を否定することはありませんでしたので)、瞬王子と氷河姫の麗しい夫婦愛は、彼等が生きているうちから既に伝説的ですらありました。
チューリップ王国で恋人同士が結婚する時、教会の神父様は、『病める時も健やかなる時も、貧しき時も富める時も、瞬王子と氷河姫のごとく、互いに助け合い、慈しみ合うことを誓いますか』と尋ねるほどだったとか。

つらく苦しい試練を乗り越え、互いの深い愛情を確かめ合うことのできた氷河姫と瞬王子はそれから一層仲良くなり、いつまでもいつまでも幸せに暮らしたということです。






Fin.






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