そんなふうに危険この上ないエンデュミオンとのやりとりを、それでもシュンが毎日求めずにいられなかったのは、それがシュンの心の高揚を誘うものだったからである。
下手をするとずたずたに傷付いて、立ちあがることができなくなってしまうかもしれない刃の上での切りつけ合いのようなエンデュミオンとの会話が、シュンは 反面快くもあったのだ。
厳しく容赦のないエンデュミオンの言葉は、自分は今生きていると実感できる何かを、シュンにもたらしてくれた。
ヘリオスに愛を囁かれている時にも、これほど心が敏感に震えることはない。
ヘリオスの愛をその身に刻み込まれている時にも、これほどシュンの身体は熱くなることはなかった。

エンデュミオンの目、エンデュミオンの声、エンデュミオンの言葉は、自分が生きていることの緊張感を、シュンに実感させてくれるものだった。
永遠の生を重荷に思う心は、死を望む心と同じものではない。
苦しむのは生きていたいからだし、シュンが つらいのは、死んでいる者のように生きること、石のように感動なく生きて存在することだったのだ。
渇ききった旅人が、幾日振りかで出会った泉の水をすべて飲みほそうとするかのように、深い森に生きる植物が、僅かな光を求めて枝葉を伸ばしていくように、シュンはエンデュミオンに救いを求めていった。






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