「こんばんは。TGK人間講座の時間です。今夜のゲストは、きゃわさん宅の瞬くんです。こんばんは、よろしくお願いしますね」 「あ、はい。こんばんは。こちらこそ、よろしくお願いいたします」 どこか南国風の衣装をつけたインタビュアーの女性に優しく微笑まれ、瞬はぺこりと頭を下げた。 少し緊張気味の瞬の横には、ふてくさった態度で氷河が控えている。このインタビューに、彼が思いきり胡散臭さを感じているのは、傍目にも明らかだった。 しかし、インタビュアーは、そんなことには動じた様子も見せない。 彼女の視線は、一直線に瞬だけに向けられていた。 「で、瞬くんは、今回のインタビューの趣旨はわかっているかしら」 「はい。きゃわおかーさんが、ゆきむらさんの質問には、何も包み隠すことなく、正直に答えるように…って言ってました。おかーさん、ゆきむらさんのとこの瞬さんに会いたがってて、そのためにも、僕が誠実な態度でゆきむらさんのインタビューに臨むことが大事なんだそうです。『誠意をもって当たれば、その誠意は必ず通じるのよ』って、おかーさん言ってました。僕もそう思います」 瞬の瞳は、まるで、これ以上誠実な態度はないでしょう? と訴えかけるように澄み、真摯そのものの輝きをたたえてインタビュアーを見詰めている。 反して、氷河は、インタビュアーを見ようともしない。 彼は、わざとらしくも横を向いて、呟くように、だが、しっかりインタビュアーの耳に届く音量で、不満をぶちまけた。 「ふん。あの馬鹿が、瞬と聞くと目の色変えやがって…! 自分の家の瞬を生贄にするのにも全く躊躇しやがらないんだからな! あんなのが俺と俺の瞬の産みの親かと思うと、情けなくてブッ殺したくなる!」 「あっ…あの、それで、僕、どういうことにお答えすればいいんでしょうか!!」 瞬の声が大きくなったのは、氷河の憤懣に満ちた言葉を打ち消すためだったろう。 どんなに理不尽なことを言う親でも、その親に逆らったらどんな目に合わされるかを、これまでの経験から、瞬は身にしみて知っていた。 インタビュアーは、もちろん、氷河の言葉など聞こえなかったかのように、相変わらずのにっこり笑顔。 「ええ。でも、その前に、瞬くん。私のことはS・Yさんって呼んでくれる? 私、ゆきむらなんて名前じゃないから」 「あ、ごめんなさい。はい、S・Yさん」 瞬は、氷河の分も誠実であろうと、ひたすら良い子の良い返事、である。少しだけ眉根を寄せて反省の態度を取ることも、彼は忘れなかった。 その様子に満足したのか、S・Y女史は、氷河の失礼には何のクレームもつけない。 代わりに、彼女は突然ぐぐぐっと身を乗り出してきた。 |