「いやだ! どうしてっ!?」 自分の胸にすがって泣く瞬の肩を、氷河は苦渋の瞳で、強く抱きしめた。 どれほど抱きしめても、どれほど求め合い、どれほど与え合っても満たされることがないほど愛しい者との別れの朝が近付いている。 たった一夜。 ただ一夜だけ与えられた短い逢瀬の時。 この一夜が終わったら、また愛しい者に会えない長い時間が始まるのだ。 一緒にいたいと、ほんのひと時だけでも離れているのが辛いのだと訴える瞬の嘆きは、そのまま氷河のものでもあった。 それは、愛し合い求め合う者たちに耐え続けることのできる罰だろうか。これまで耐えられた一人だけの時間こそが奇跡だと、氷河は瞬に会う夜ごとに思う。 この悲しい夜を、これまで幾度繰り返したか。 悲しい別れの朝を、涙に濡れる瞬を抱きしめながら、これまで幾度迎えたことか。 |