一路、日本!




紫龍が、懐かしい仲間たちの待つ日本の土――正しくは、空港の床――を踏んだのは、それから2日後のこと。
アイスクリームを買うために城戸邸を出てから、半年の月日が流れていた。


「ああ、そういえば、自分の分を買うのを忘れていたな」

紫龍は己れの迂闊さに苦笑しながら、空港のコンビニに入って、自分のために100円の抹茶アイスを買い込むと、ほっと安堵の息をついた。

「これで、星矢たちの友情に報いることができる」

長いアイスクリーム購入の旅はついに終わり、やっと、懐かしい仲間たちの許に帰ることができるのだ。


星矢の、屈託のない笑顔。
瞬の、優しい微笑み。
一輝の、いつも意味もなく燃えている瞳。
氷河の、瞬ばかり見ている横顔。

一人二人どうでもいい奴がいないでもなかったが、ともかく、彼は信頼に足る仲間たちのいる国に、ついについに帰ってきたのだ。

――と、そう思った途端。


紫龍は激しい衝撃に襲われたのである。

衝撃と言っても、それは客観的に見れば、何ということもない、ただの立ちくらみだった。
仲間たちの許に帰れると心を安んじた途端に、それまで張り詰めていた紫龍の気が緩んでしまったのだ。

いかに鍛え抜かれた肉体の持ち主の紫龍といえど、この半年間の修行は彼の心身に多大なる負担と緊張とを強いていた。

仲間たちのためにと、半年もの間不眠不休だった彼に、溜まりに溜まった疲労が一気に襲いかかってきたのだ。






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