そんで2時間。 堪え性のない俺にしちゃ、ねばった方だと思う。 けど、もう限界だった。 俺は、無意味な仕事をもくもくと続けてるガキ共の側に行き、 「おい、食い物をよこせ」 と命令口調で言った。 瞬の返事はにべもない。 「差し上げたものを食べてないじゃないですか」 そりゃ、瞬にしたら当然の返事だ。確かに当然の返事だが、こっちだって腹が減って死にそうなんだ! 俺は右の拳を振りあげて、瞬に殴りかかろうとした。 とにかく、俺は、この場で一番強いのは誰なのかを、このガキ共に示しておかなきゃならねーと思ったんだ。 なのに。 何がどうなってるんだか、次の瞬間、地べたにころんと転がされてたのは俺の方だった。 叩きつけられたんでも殴られたんでもねぇ。 ほんとにころんと転がされていた。 「さっきあげたものを拾いなさい。でなければ、次は無しです」 地べたに這いつくばっている俺に瞬はそう言って、言われた俺は――俺は、瞬の言葉に従った。 仕方ねーだろ。 俺は腹が減ってたんだ。 地べたをいざるようにして、さっき俺がポッキーを捨てたところに戻っていって、薄暗い中、手探りでそれを拾って、食おうとしたら――瞬の手がそれを止めた。 「こっちを食べてください。これは、最悪の時に役立てるようにしましょう」 「…………」 俺はもう男の面子も何もなかった。瞬に差し出されたものがたとえ泥団子だったとしても、俺は文句も言わずに食っていたに違いない。 腹一部にも程遠かったが、食い物を食えたって事実が、俺を少し落ち着かせてくれた。 「おい……てめーらは食わねーのか」 「僕たちは朝食をとってきましたから」 そうは言っても、もう夕方だ。 実際、星矢の腹はさっきからうるさく鳴ってる。 俺には、こいつらの考えてることが全然わからなかった。 そりゃ、こいつらが食い物を独り占めしたりなんかしたら、腹は立っただろうが、でも仕方ねーと諦めもついたし、当然だとも思ったろう。 こいつらのすることは、俺には理解できねー。 こいつらは、どこか不気味だ。 だから、俺が、 「いい子ぶんなって言ってんだろっ! 俺に恩でも売っといて、あとでウチの親から礼でもせしめようって魂胆なのかっ!?」 そう言ったのは、俺にもわかる理由がほしかったからだ。 こいつらの行動の理由。 でなきゃ、俺は、訳もわからずに――次元の違うところにいる相手から施しを受けてる虫ケラみてーじゃねーか。 「確かに、本人からは何の返礼も期待できそうにねーなー」 「…………」 星矢が、肩をすくめて言う。 また、腹の立つ事実。 「きっさま〜!!」 腹が減ってるせいで今いち迫力がなかったが、俺は星矢を殴る素振り――素振りだけ――を見せた。 実際殴りつける力が俺に残っていたかどうかは俺にもわからなかったし、もしその力があったんだとしても、どーせ俺はこいつらには敵わなかっただろーが。 ともかく、幸いなことに、その場は瞬が俺を制してくれた。 「やめた方がいい。空腹な時の星矢に手を出すのは自殺行為です」 「瞬ー、俺こいつ殴りてー!」 「駄目だ」 「だってよぉ!」 「我慢する!」 「………ふぁーい」 星矢の返事は、腹が減ってるせいか、妙に情けねーシロモノだった。 |