その日、メイドロボたちは、氷瞬家の庭で、たんぽぽの綿毛につかまってふわふわ遊んで――もとい、瞬を楽しませるという労働にいそしんでいました。


「でも、どうして、ここにたんぽぽの花が咲いたんでしょうね、瞬様」
「先週は、僕たちのお家の前に、急にレンゲ草が生えてたりしたんですよ。きれいなピンク色のお花が咲いてて、とってもいい匂いがするの」

実は、それは、メイドロボたちがダンスのお稽古をしている間に、こっそり氷河が植えたものだったのですが、氷河は、
「どっかから、種が飛んできたんだろう」
と素知らぬ顔。

氷河は、メイドロボたちが楽しそうにしているのを見ると瞬が喜ぶのでそうしたつもりでいたのですが、瞬は、氷河自身がメイドロボたちを可愛く思っているからそんなことをしたのだと思っていました。
どっちにしても、それは間違いではありません。

メイドロボたちは、幼い頃の瞬を写して作られた超高性能メイドロボなのですから。



それはともかく、その日、そんなふうにほのぼの幸せしている氷瞬ファミリーを遠くから見詰める二つの目がありました。
それは、氷瞬家の近所に住んでいる、きゃわという怪しい人物の目でした。

きゃわは、氷瞬家の瞬がめちゃくちゃ好みのタイプだったので、以前から時々、用もないのに氷瞬家の周りをうろうろしていたのです。

ひとしきり午後のお遊びを終えた氷瞬ファミリーが家の中に戻っていくと、きゃわは氷瞬家の敷地を囲む垣根を乗り越え、氷瞬家の側に足音も立てずに近寄っていきました。
彼女は瞬の姿をもっと近くで見たかったのかもしれませんし、あるいは妖精の噂の真偽を確かめたかったのかもしれません。

ともあれ、彼女はあまり人目につかない西側の窓から、こっそり氷瞬家の中を覗き見ました。
そして、彼女は、そこで、この世のものとも思えないくらい可愛らしい妖精の姿を見てしまったのです。






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