さて、この非常&異常事態に際して、氷河と瞬がそんなふうにほのぼの家族をしている間に、メイドロボたちはメイドロボハウスの寝室に辿り着いていました。


「急げ急げ、たいへんたいへん」
「よしっ、起こすよ!」

急いで氷の国星の小人たちの眠るベッドに駆け寄ったメイドロボ4号と5号に、1号と13号から『待った』がかかります。
「待って待って、優しく起こさないといけないんだよ」
「そうそう、氷の国星の小人さんたちの心臓が止まったら一大事だよ」

そうです。
なにしろ、氷の国星の小人たちは、(自称)とってもデリケート。
地球に危機が迫っていても、南極や北極で騒動が起きていても、氷の国星の小人たちのデリケートな心臓を止めてしまうわけにはいきませんでした。


「優しく起こすって、どういうふうに?」
「瞬様が氷河様を起こす時みたいにすればいいんだよ、きっと」
「えー……と、耳元で、『朝だよ、起きて』って優しく囁くんだよね」
「うん、優しい起こし方だよね」

「でも、氷河様はそれで起きた試しがないよ」
「そういう場合、瞬様は、氷河様の体を揺すってたよね」
「うん、優しくね」

「だけど、それでも氷河様は起きないよね」
「次は、確か、お布団剥いじゃうんだよね」
「そう、優しく剥ぐんだよね」

「それでも起きないよね、氷河様って」
「でもさ、瞬様の鶴の一声があるとすぐ起きるよね」
「『氷河が起きないなら、僕、ひとりで出かけちゃおうかな』だよね」

「あの鶴の声って、氷の国星の小人さんたちにも有効だと思う?」
「どうかなぁ? 瞬様が一人でどこかに出かけていっても、氷の国星の小人さんたちには何の不都合もないような気がするけど……」

多分、おそらく、おやつの準備さえできていれば、氷の国星の小人たちは瞬がいなくても賑やかにお留守番をしていることでしょう。
瞬が他のオトコに目をつけられたって、氷河と違って、あんまり気にもしないでしょう。

となると、メイドロボたちは、氷の国星の小人たちを優しく目覚めさせるための別の言葉を探さなければなりません。
でも、氷の国星の小人たちと今日知り合ったばかりのメイドロボたちには、氷の国星の小人たちを起こすのに有効な鶴のセリフが思い浮かびませんでした。

「何かいいセリフはないかなぁ」
「ないかなぁ」
「うーん……」× 15



氷の国星の小人たちのデリケートな心臓を慮って、うーん、うーんと長考に入ったメイドロボたち。
お昼寝爆睡中の氷の国星の小人たち。
そして、仲良く二人で洗濯物を畳んでいる氷河と瞬。


運命の時は刻一刻と迫っています。

──迫っているはずでした。







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