氷瞬城は、1年の半分以上を雪と氷に閉ざされる氷の国にあって、春の野原に咲くお花のように可愛いお城です。 全く甲斐性のない氷の国の氷河が、いったいどうやってお城を管理・運営しているのかは誰も知らない謎でしたが、ともかく、そこは氷の国の氷河と小人たちの愛のお城(のはず)でした。 お城ですから、当然、晩餐会用の立派なお食事室なんかもあったりします。 そこには、小人さんたちが朝から総出でこまねずみのように働いて用意したご馳走が、山のように! ちんまりと並べられていました。 ご馳走のお皿はたくさんあるのですが、なにしろ小人さんたちがママレンジで作ったパンケーキはお洋服のボタンサイズ、小人さんたちが焼いたパンはビタミンの錠剤サイズ。 広いダイニングテーブルの真ん中に、ままごとのお皿がちまっ☆ と置いてあっても、それはなかなか豪華なお食事には見えないのでした。 小人たちは、でも、そんなことには気付きません。 なにしろ、小人たちは、自分たちが今の10倍の人数だとしても食べきれないくらいのご馳走を準備していたつもりなのですから。 氷の国の氷河の腕を滑り台にしてテーブルの上に降り立った小人たちは、お皿の横にずらりと並んで、 「一生懸命焼いたんです。お二人のお口に合うと嬉しいんですけど……」 と、ちょっとどきどき、ちょっとわくわくしながら、たれたれさん宅のお二人にご馳走を勧めました。 小人たちの勧めてくれるパンケーキのあまりの小ささに、瞳を見開いて驚いたたれたれ瞬ちゃんとたれたれ氷河さんでしたが、すぐにお二人は和やかなお顔になりました。 小さな小さなパンケーキを指先にのせて、しみじみとそれを見詰め、しばし感動した後、とびきりの笑顔でぱくり☆ 『美味しい』と言ってもらえるかどうか、どきどきしながらお二人を見守っていた小人たちは、 「わぁ、美味しいv」 「うん、美味いな」 というお二人の言葉を聞いて、ぱーっっと花のような笑顔を咲かせたのです。 「わーい、やったーっっ !!!! 」 小人たちは手に手をとって、テーブルの上で、ぴょんぴょん跳ねて大喜び。 たれたれさん宅のお二人には、小人たちの喜ぶ様子が、小人たちのパンケーキ以上のご馳走でした。 そして、もう一人。 小人たちが喜ぶ様を見て感動している男がその場にはいたのです。 (可愛い…! 確かに可愛い! しかし、合体したら、俺にとって、もっともっと可愛い瞬ができあがるはずなのに…… !! ) 複雑怪奇気分の氷の国の氷河は、小人たちの可愛らしさに感動しながらも、胸の奥の涙をぐっとこらえていたのでした。 |