「氷河、どーしたの? 元気ないみたい」 「うん、元気ないみたい」 氷の国の氷河の落ち込みの原因を知らない小人たちは、暗い目をしている氷の国の氷河を心配して、氷の国の氷河に尋ねました。 尋ねながら、小人たちは突然、あることを思い出したのです。 「僕たち、数字クッキーが嬉しくて、すっかり忘れてたけど……」 そうです。 小人たちは、氷の国の氷河が報われない恋に苦しんでいるという、あのとてつもない誤解を思い出したのでした。 「氷河、たれたれ氷河さんのことは諦めた方がいいよ」 「氷河には、僕たちがいるよ」 「そーだよ、僕たちがいるよ」 「氷河、これあげるから元気出して」 そう言って、小人たちが氷の国の氷河に差し出したもの。 「僕のも1個あげる」 「僕のもあげる」 それは、今日一日、小人たちが片時も離さずに抱きしめていた、大切な大切な数字クッキーでした。 「しかし、せっかく2つに増えたクッキーなんだろう? いいから、それはおまえたちが食べなさい」 いくら落ち込んでいるからと言って、小人たちからおやつをとりあげるわけにはいきません。 氷の国の氷河の傷心は、数字クッキーで癒されるようなものでもありませんでしたしね。 「そりゃあ、僕たち、たれたれ瞬ちゃんのおやつは、僕たちの氷河とおんなじくらい大好きだけど」 氷の国の氷河はおやつと同レベルでした。 「でも、氷河に元気出してほしいもの」 「うんうん」 「僕たちだけ楽しくて、おいしいなんて、つまんないよね。氷河も一緒でなくちゃ!」 「楽しいのもおいしいのも、氷河と一緒でなくちゃ!」 「だよね〜vv」 「僕たちと氷河は仲良しなんだもん!」 「僕、氷河、だーい好き」 「僕だってー !! 」 「氷河、一緒に食べようね!」 「一緒でなきゃいやだよね!」 小人たちは口々にそう言いながら、大事な大事な数字クッキーの半分を氷の国の氷河に差し出します。 「お……おまえたち……」 氷の国の氷河が哀しい運命に翻弄されるのは、大抵、小人たちの正直すぎる言葉のせいでしたが、それでも氷の国の氷河がこれまで挫けずに生きてこれたのは、やはり小人たちの嘘のない優しさのおかげでした。 「おまえたちは俺の命だーっっ !!!! 」 小人たちの優しさに感極まった氷の国の氷河は、15人の小人たちを抱きしめて、絶叫しました。 氷の国の氷河は、小人たちの優しい心が、とてもとても嬉しかったのです。 哀しい出来事に慣れている氷の国の氷河は、普通の人ならちょっといい気持ちになってそれで終わってしまうような些細なことで、とてつもなく幸せになれるのでした。 氷の国の氷河の幸せに水をささないためにも、たれたれ氷河さんとたれたれ瞬ちゃんが、数字クッキーなんかよりずっとずっとずぅ──っといいことをしているんだってことは、氷の国の氷河には内緒にしておいてあげましょうねD |