「そ……そっかー。そーだったんだー」
「僕たち、何も知らないで歌ってたね」
「僕、てっきり怪獣のことだと思ってたのに」

「教えてくれてありがとう、15号!」
「××のこと誤解したままだったら、氷河に悪いもんね」
「僕たち、またお利口になっちゃったね」

あったかいところにやってきてから、どんどんお利口になっていく自分たちに、小人たちはちょっといい気分。

「うん、でもね……」
けれど、“正解”を得て喜ぶ仲間たちを見て、彼等に“正解”を与えた15号の表情はなぜか暗く硬いものに変わっていったのです。

「どうしたの、15号?」

仲間たちに尋ねられた15号の口調は、今度はひどく沈んだものでした。
「うん……。氷河が、僕たちに、氷河と一緒にお酒を飲めるくらい大人になってほしいって思ってるのはわかるんだけど、僕、お酒の匂いもタバコの煙も嫌いなの……」

「ああぁぁぁぁぁ……」× 14

15号の言葉に、14人の仲間たちが一斉に長い溜め息を洩らします。
実は、当然のことですが、小人たちは全員、お酒とタバコが嫌いだったのです。


「ぼ…僕たち、氷河の期待には沿えないね……」
「でも、タバコって身体によくないんでしょ?」
「お酒だって中毒になるんだよぉ」
「氷河は、僕たちにそんなものたしなんでほしいのかしら……」
「氷河は、自分では飲まないし、吸わないよね?」

氷の国の氷河は、小人たちが嫌がるので、現在禁酒禁煙中でした。

「僕、なんだか氷河がわからなくなってきちゃった……」
「うん、僕も……」
「氷河は、僕たちがアルコール中毒でニコチン中毒な小人たちになっちゃっても平気なのかしら……?」
「そんなことあるはずないよ!」
「でも、だったら、どうしてあんな歌……」
「そ……それは……」

考えても考えても、小人たちには氷河の真意が理解できません。
というより、小人たちは理解したくなかったのです。
小人たちは、アル中でニコ中の小人になんか、なりたくありませんでしたからね。




身体どころか、唯一通じ合っていた心までもが離れかけている16人。

果たして、氷の国の氷河の心と身体の運命は、どういうことになってしまうのでしょうか……。