そこで、氷の国の氷河が見たものは!


たれたれ氷河さんの足元に行儀良く一列に並んで、たれたれ氷河さんとたれたれ瞬ちゃんの仲良しこよし風景を、ぽか〜ん☆ と見あげている小人たちでした。


想像していた場面とは全然違うその光景に(氷の国の氷河がどんな光景を想像していたのかは、彼にしかわかりません)、氷の国の氷河は、かーなーりー ──気が抜けてしまったのです。


「お……おまえたち、たれたれ氷河に何かされたんじゃないのか !? 」

氷の国の氷河には、たれたれさん宅の二人の幸せを羨む余裕もありませんでした。

「あ、氷河。ううん、僕たち、たれたれ瞬ちゃんに何かされちゃったの」
「たれたれ瞬ちゃんに? たれたれ氷河じゃないのか?」

「たれたれ瞬ちゃんが、僕の指定席にお座りしたくなったんだって〜」
15号は寝心地のいいベッドをたれたれ瞬ちゃんに奪われて、ちょっと不満顔です。

たれたれ氷河さんに密着していたせいで、たれたれ瞬ちゃんにも大人の事情が生じてきたんですね。


「だから、みんな、たれたれ氷河さんから降りたの〜」
「そ……そうか。それはよかった、そうか」

小人たちの貞操の危機の心配がなくなったことと、たれたれ氷河さんと対決せずに済んだことで、氷の国の氷河はほっ☆ と一安心です。

けれど、小人たちは不満たらたら。
「ちっともよくないよぉ。僕たち、もっとたれたれ氷河さんでお昼寝して、もっとたれたれ氷河さんに遊んでもらいたかったのに〜!」
「もっとお昼寝してたかったよね〜」
「だよね〜」× 15

「おまえたち……」

『どーして、俺じゃダメなんだ!』と内心号泣しつつ、氷の国の氷河は、無理に作った笑顔を小人たちに向けました。

「いや、二人の邪魔をしてはいかん。おまえたちがいると、二人が先に進めないだろう。おまえたちとは俺が遊んでやるからな」

「先ってどこー?」
「あー、それも俺が教えてやるから、あっちで俺と遊ぼう」
さりげなく大胆発言をして、氷の国の氷河は、その手で小人たちを拾いあげました。

「でもぉ。氷河は、たれたれ氷河さんと違って、氷河登りすると、何か我慢してるみたいに辛そうにするから……」
氷の国の氷河の腕にからりと並んで座った小人たちが、心配顔で氷の国の氷河を見あげます。

「たれたれ氷河さんは、僕たちが登ってもぴくりともしないんだよね」
「だから、僕たち、氷河で氷河登りはしないように我慢してたんだよ。氷河を困らせたくないから」


氷の国の氷河が、小人たちに氷河登りされると辛いことになるのは、当然のことです。
いくら小人だからって、それは氷の国の氷河にとって合体瞬の一部。
その小人たちに、身体のあちこちを無邪気に触られたら、これはやっぱり切ないですよね。

小人たちがその辺の事情をわかってくれていないことは、氷の国の氷河にはとてもやるせないことでした。
けれど、氷の国の氷河は、そんなことよりも、小人たちが自分を思い遣って、たれたれ氷河さんで遊んでいたのだということの方に、ずっとずっと胸を打たれたのです。


「おまえたち……」
小人たちの優しい思い遣りの言葉を聞いて、氷の国の氷河は思わずほろり。


氷の国の氷河は、小人たちをしっかりと抱きしめて、

「おまえたちは、やっぱり俺の命だーっっ !!!! 」

と大絶叫したのでした。



氷の国の氷河の絶叫にも関わらず、二人だけの世界に浸って仲良ししていられるたれたれ氷河さんとたれたれ瞬ちゃんは、とってもとっても大物でした。



何にしても、そういうわけで、氷の国の氷河は、愛する小人たちに思う存分氷河登りをさせてあげるために、不感症になる決意をしたのです。


氷の国の氷河が頼れる先生は、もちろん! たれたれ氷河さんしかいませんでした。