狂った頭は、氷の国の氷河から、考える力を奪い去ってしまっていました。

「とりあえず、おやつ食べよっか」
と、合体瞬ににっこり笑って言われた氷の国の氷河は、何も考えずに、
「はい〜vv」
と返事をし、合体瞬の前に15人分のケーキを並べました。
そして、自分の前にも、とりあえず1人分。

「いただきま〜す♪」× 1
「ど……どうぞ〜vv」
もう、氷の国の氷河には合体瞬の顔しか見えていません。
その視線を気にした様子もなく、合体瞬は、猛然と、たれたれ瞬ちゃんのお手製ケーキを食べ始めました。

「ぱくぱくぱくぱく むしゃむしゃむしゃむしゃ はぐはぐはぐはぐ」× 1

(食べてる姿も可愛〜い〜vvv)

合体しても、氷の国の瞬は、小人たちの嗜好と食欲をそのまま受け継いでいるらしく、小人さんサイズではない常人サイズ・15人分のケーキをあっという間にぺろり。
「ごちそうさま〜v」× 1

「はい〜vv」
氷の国の氷河は、ほとんど腑抜け状態です。

けれど、合体瞬には、氷の国の氷河の腑抜け状態よりも気になるものがあったので、そんなことを怪訝に思ったりはしません。

合体瞬の気になるもの。
それは、氷の国の氷河の前にある手つかずのケーキでした。

合体瞬は、氷河の前にあるそのケーキをじっと見詰めて言いました。
「氷河、それ食べないの?」

「あ?」
「美味しそうだね」
「あ、これもおまえにやるぞ」
「わぁ、氷河、ありがとう!」

嬉しそうに顔をほころばせた合体瞬に、氷の国の氷河は、ふにゃららら〜。
その顔は、まるで、レンジで加熱しすぎて溶けたお餅のようでした。
そのお餅顔とお餅頭で、氷の国の氷河は、合体瞬が喜んでくれるのなら、世界中のケーキを合体瞬に捧げたいとまで思っていました。


氷の国の氷河からケーキをもらった合体瞬が、突然、氷瞬城のダイニング・ルームに大声を響かせます。
「あ、わかった!」

「な…何がだ?」
その大声にちょっとびっくりして、少し思考力が戻った氷の国の氷河に、合体瞬は(氷の国の氷河に較べれば、はるかに)お利口そうな目を向けました。

「たれたれ瞬ちゃんは、僕の氷河が僕にケーキをくれることがわかってたんだよ。その時に、15人だとけんかになっちゃうって思ったんじゃないかな。だから、合体しなさいって言ってくれたんだよ」

「あ、な……なるほど」
「そんな心配いらないのにねぇ。ぱくぱくぱ」
3度目の『く』までいかずに、合体瞬は、氷の国の氷河からもらったケーキを食べ終わりました。

そして、お行儀よく、おやつ後のご挨拶です。
「あー、おいしかった。ごちそうさま〜v」× 15



(うわあああああああ〜っっっ !!!! 瞬が! 俺の瞬が〜〜〜っっっ !!!! )


この状況をどう説明したらいいのでしょう。

結論だけをお知らせしますと、哀れな氷の国の氷河は、口からぶくぶくと泡を吹いて、その場に失神してしまったのでした……。