小人たちにぽかぽか殴られても、たれたれ氷河さんはずっと無言でした。
弁明も弁解もせず、小人たちにされるがままでいました。

やがて、小人たちはたれたれ氷河さんを殴り疲れてきましたが、疲れるほど殴っても、小人たちの涙は止まらないのでした。

そんな小人たちを見詰めていたたれたれ氷河さんは、やがて、低い声で、
「そうだ、俺がやったんだ」
と、静かに告白したのです。

「氷河……!」
「たれたれ氷河……!」

たれたれ氷河さんが犯人でないことを知っているたれたれ瞬ちゃんと氷の国の氷河は、その言葉にびっくり。

2人の驚愕をよそに、たれたれ氷河さんは言い募りました。
「すまなかった、氷の国の氷河。みんな俺の企んだことだ」

「や…やっぱり、僕たちの氷河があんまりカッコいいから嫉妬したんだ……!」
小人たちの推理は、相変わらず間違っています。

「その通りだ……」
と笑わずに言えるたれたれ氷河さんも大物です。


「たれたれ氷河……」

氷の国の氷河はおばかさんでした。
けれど、彼は、彼への小人たちの信頼が壊れることのないようにと、たれたれ氷河さんが真犯人を庇ってくれているのだということに気付かないほど、どうしようもないおばかさんでもなかったのです。


「おまえたち、違うんだっっ !! 」
人を犠牲にした上に築きあげられた信頼に、どれほどの価値があるでしょう。
そんなものは信頼でも愛でもありません。

たれたれ氷河さんの思い遣りに思い至った途端、氷の国の氷河は小人たちに向かって叫んでいました。

「違うんだ! 犯人は俺だ! 俺が、あのがちがちケーキを作ったんだ! ケーキを作ってやれば、おまえたちが合体して、俺と……その、なんだ、いいことをしてくれるに違いないと思ったんだ。たれたれ氷河は犯人じゃない。真犯人はこの俺だ……!」

すべてを告白し終えると、氷の国の氷河は、がくりとその場に膝をつきました。


「氷河……そんな……」× 15

氷の国の氷河の、思ってもいなかった告白に、小人たちはひどくショックを受けていました。
だって、氷の国の氷河は、小人たちが世界でいちばん信じている人だったのです。
世界でいちばん大切な人だったのです。

世界でいちばん大好きな人だったのですから。