ところで、氷の国の小人たちは、氷の国の氷河と違って、運命の神様に愛されています。

大風にさらわれた小人たちが降り立った場所は、氷の国からも某島国からも遠く離れた、風の国というところでした。
風の国には、風の国の氷河という、さわやか系の氷河がいました。
彼は、風に乗ってやってきた可愛い小人たちを拾いあげると、自分の家に連れていって、それはそれは親切にもてなしてくれたのです。

風の国の氷河はさわやかに優しい氷河でしたし、風の国の名産は、さわやかな風を含んだようなふわふわスフレ。
おいしいスフレをおなかいっぱい食べさせてもらった小人たちは、すぐに元気になりました。

そして、小人たちは、氷の国の氷河が自分たちを捜しに来てくれることを信じて、風の国の氷河の許で救援を待つことにしたのです。

風の国のスフレを毎日食べたいからではありませんよ。
迷子になった時には、その場を動かないのが迷子の鉄則ですからね。
小人たちの決定は、至極当然のことでした。

小人たちの決意を聞くと、風の国の氷河は、
「そうしてくれたら嬉しいなぁ。風の国には、風以外に誰も住んでいなくて、ちょっと寂しかったんだ。スフレはいくらでもあるからね。小人さんたちが、いつまでも風の国にいてくれたら嬉しいなぁ」
と言って、とてもさわやかな笑顔を見せてくれました。


風の国の氷河のお家は、さわやかな風の吹く草原の真ん中にぽつんと建っているログハウス。
風の国の氷河は、そこにひとりぽっちで住んでいました。

小人たちが、風の国で氷の国の氷河の救援を待つことにしたのは、案外、風の国のスフレがおいしかっただけではなかったのかもしれません。


ともかく、小人たちは、そういうわけで、アルムの山の中にあるハイジのおじいさんのお家のような風の国の氷河の許で、氷の国の氷河の救援を待つことにしたのでした。






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