「氷河ったら、あんなにお金と食べ物は大事にしなさいって教えておいたのに、ちょっと目を離すとこれなんだから!」 バターサンドクッキーを食べ損なった9号は、大激怒です。 もちろん、1号から8号、10号から15号も以下同文。 「東京バナナー!」 「六花亭のバターサンドクッキー!」 「ういろー!」 「きしめんとうどんは我慢するけど、一六タルトー!」 「温泉卵はともかく、おみかんー!」 「氷河のばか―っっ !! 」× 15 再会の喜びの涙とは違う滂沱の涙が、小人たちの頬を濡らします そして、その涙は、すぐに、怒りのために蒸発してしまいました。 「再教育が必要だね。」 9号は、とても深刻な顔をして言いました。 「うん、必要だよ」 「どう考えたって必要だよ」 他の小人たちも、厳しい顔をして頷きます。 「よし。じゃあ、風の国の氷河さん、そういうわけで、僕たちは僕たちの氷河を連れて、氷の国に帰ります」 「長い間、お世話になりましたー !! 」× 14 「帰っちゃうのかい? 小人さんたちがいなくなったら、風の国は寂しくなっちゃうなぁ」 小人たちの堅い決意をさわやかに聞きながら、風の国の氷河は、さわやかに残念がりました。 小人たちも、さわやかで優しい風の国の氷河とお別れするのはとても寂しかったのですが、けれど、氷の国の小人たちの運命の氷河は、風の国の氷河ではありません。 風の国の氷河には、風の国の氷河の運命の人がいるはずでした。 「風の国の氷河さんは、さわやかでとっても素敵だから、きっとすぐに風の国の瞬ちゃんが見つかると思うの」 「いつもさわやかに優しくしてくれてありがとう」 「僕たち、このご恩は一生忘れません」 「どうもありがとうございましたー !! 」× 15 礼儀正しく風の国の氷河にお辞儀をしてから、9号は、 「さあ、氷河も、風の国の氷河さんに、ちゃんとお礼言って!」 そう言って、足元のふらついている氷の国の氷河を、無理にその場に立ちあがらせました。 「あ……はぁ……。あ…あの、風の国の氷河さん、俺の小人たちがお世話になりまして……。氷の国に帰りましたら、後日、お礼のぱんつを送らせていただきます……」 風の国の氷河がどういう人間なのかを説明してもらってもいない氷の国の氷河は、訳がわからないまま、それでもとにかく9号の命令に従いました。 そうしていれば、何事も間違いがないことを、氷の国の氷河はよく知っていました。 「え? ぱんつ? いや〜、それは困ったなぁ」 風の国の氷河は、氷の国の氷河の言葉を聞いて、さわやかに照れ照れです。 「うん。じゃあ、僕たちはこれで。どうもありがとうございました」 「風の国の氷河さん、またね〜」× 15 「うん、またね。気が向いたら、風の国に遊びにおいで」 風の国の氷河は、別れの言葉もさわやかです。 またいつか風の国に遊びに来ることを約束して、小人たちはさわやかに、風の国をあとにしたのでした。 |