己れの犯した罪と過ちを認め、心から反省して泣きわめくひよこ組のお客さんたち。 その様子を見て、9号は満足したようでした。 これでこそ、心を鬼にして厳しい教官を演じた甲斐があったというものです。 罪を憎んで、人を憎まず。 9号は、この世から報われないお菓子が少しでも減ってくれるのなら、それでよかったのです。 「ふぅ、わかってくれたらいいんだよ。さ、みんな、お相手してあげて」 「はーい」× 14 9号の号令一下、小人たちはお客さんたちのお相手開始です。 小人たちは、泣いているお客さんたちを優しく慰めてあげました。 「お客さんたち、泣かないで」 「お客さんたちが泣くのは、自分が間違ったことしてたって素直に認めて、反省したからだよね」 「偉いよね〜」 「うんうん、フツーの子供にはできないことだよね」 「泣くのはもうやめて、溶けてないアイスクリーム食べようね。追加注文でいいかな」 「うん」 「でね、僕たちも一緒に食べていい?」 「みんな、いっちょに食べよう」 「わー、お客さんたら太っ腹― !! 」 「素敵― !! 」 氷の国の小人たちは、氷の国の氷河なんかよりずっと、そちらのお仕事に向いているようでした。 もしかしたら、小人たちには、できない仕事というものがないのかもしれません。 お客さんたちの追加注文をゲットすると、小人たちは、早速氷の国の氷河に命じました。 「氷河、アイスクリーム、僕たちの分とお客さんたちの分、持ってきて!」 「あと、みっくちゅじゅーちゅもね」 「僕、ばにゃにゃじゅーちゅの方がいいなー」 「あ、僕もー!」 「か……かしこまりました」 氷の国の氷河も、どちらかというと、芸を見せる仕事よりは、お運びさんの方が向いているようです。 悲しいくらい自然に、氷の国の氷河は、ホストからお運びさんへの転身を果たしていました。 (そう、その調子でどんどん注文するんだよ。その売り上げが氷河のお給金(=おやつ)になるんだからね……) ──なーんていう、9号の心の呟きを知らないお客さんたちは、 「小人しゃんたちもいっぱい食べてね〜」 「わたちのママ、ひょうがちぇんちぇいのとこに来るたび、わたちがいい子になるからって、おこじゅかい、いっぱいくれるの〜」 「ひょうがちぇんちぇい、ママたちに受けがいいんだよね〜」 「ダジャレ、へたなのにね〜」 「小人しゃんたちがついてなかったら、一人前でもなしゃそうなゃのにね〜」 ――と、太っ腹モード全開です。 「お客しゃん、しゅてき〜 !! 」(←お客さんの口調が移った)」 「やーん、僕たち、もう、めろめろ〜」(←みっくちゅじゅーちゅに酔った)」 「また来て、僕たちの氷河をご指名してね〜」 「よろちく、お願いね〜 !! 」× 15 小人たちに“お願い”されて断れる人間なんて、この世にいるはずがありません。 ひよこ組のお客さんたちは、小人たちの可愛いおねだりのせいで、ますます太っ腹になり、テーブルの上は、氷の国の氷河が次から次に運んでくるおやつでいっぱい、(小人たちの)足の踏み場もなくなるほどでした。 この様子では、おそらく、今月、氷の国の氷河がお店ナンバー1ホストの座につくのはまず間違いないでしょう。 氷の国の氷河のナンバー1ホスト伝説は、そんなふうにして作られていったのでした。 |