「こらーっっ !! このケーキをどーしてくれるんだーっっ !! 」 小人たちを追いかけて時空を越えた氷の国の氷河が辿り着いた場所は、某テレビ局でした。 そこでは、来週放映される予定のミスターまりっこの番組の収録準備中。 ──だったのですが。 ハンドパワーの種と仕掛けである巨大ケーキが、どこからともなく現われた小人たちに、あれよあれよという間に食べ尽くされてしまったせいで、番組のプロデューサーさんは烈火のごとく怒っていました。 小人たちは満腹で、幸せだったので、プロデューサーさんが怒鳴っている訳がわかりません。 「あー、おいしかった!」 「あのおじさん、何だか大声で怒鳴ってるね」 「ほんとだ。なんで怒ってるんだろ」 「察するに、カルシウム不足だね」 「あ、それは健康によくないね」 「僕たちみたいに、ミルクと卵でできてるケーキをたくさん食べれば、カルシウムばっちりなのにね」 「ほんとだね〜!」× 15 「あわわわわわ……」 いつもなら、“小人たちの幸せ”イコール“氷の国の氷河の幸せ”です。 小人たちの笑顔が、氷の国の氷河の幸せでした。 けれど、どんなことにも例外はあるもの。 今、氷の国の氷河は、小人たちが幸せな分、激しい不幸の予感に襲われていました。 これはもう、ハンドパワーの修行がどうこうという次元の問題ではありません。 運命の神様に溺愛されている小人たちはともかく、氷の国の氷河を愛してくれているのは、哀れの神様だけなのです。 小人たちのおなかの中に消えてしまったケーキの責任をとらされて、一生テレビ局のトイレ掃除のおじさんとして生きていくことになる氷の国の氷河──なんて、哀れの神様が小躍りして喜びそうなシチュエーションではありませんか。 氷の国の氷河の背筋をさーっっ☆ と冷たいものが走り、氷の国の氷河の目の前は真っ暗になってしまいました。 |