ともあれ、氷の国の氷河の仕事は一段落し、氷の国の氷河は無事に生き返りました。
今日は久し振りに、みんなでゆっくりおやつのテーブルを囲むことができます。

もちろん、どんな時にも、氷の国の小人たちの口は休むことを知りませんけどね。

「ねえ。なんだか、ペルセウス特急便のおにーさん、やたらに僕たちの氷河をじっと見詰めてたね。はむはむ」
「そう言えば、そうだったね。ぱくぱく」
「なんでだろーね。むしゃむしゃ」
「そりゃあ、僕たちの氷河があんまりカッコいいから、つい見とれちゃったんだよ。ぺちゃぺちゃ」
「あ、そっかー。はぐはぐ」
「氷河ったら、こんなにへろへろになるまで、お仕事頑張ってくれたんだもんね。もぐもぐ」
「タペストリーの前金で食べた10メートルケーキ、おいしかったよね。ぺろぺろ」
「僕たちのために命懸けだもんね。もしゃもしゃ」
「男の中の男だよね。もぎゅもぎゅ」

「ペルセウス特急便のおにーさんが見とれるわけもわかるよね〜 !! 」× 15

「おまえたち……」
小人たちのその言葉を聞いた氷の国の氷河は、死ぬ気で頑張ってよかったと感激しまくりです。

労働の喜びとは、こういうことをいうのでしょう。
金銭的代償だけではなく、こんな喜びがあるからこそ、氷の国の氷河は、どんな過酷な労働にも耐え続けることができるのです。
そして、自分が、誰のために、何のために働くのかを知っている労働者は、真に幸せな労働者であるに違いありませんでした。


「でも、最近、送られてくるケーキが減ってきたね。今日はトラック2台分しかないんだって」
「放映から3ヶ月だからね。でも大丈夫」
「何かいい方法があるの、9号?」
「また、テレビに出させてもらうの?」
「そんなことする必要はないよ」
「どーするの?」
「僕たちの出た『ミスターまりっこショー』を再放映してくださいって、テレビ局に何回も電話するだけ。そしたら、再放映を見た人たちから、またすぐたくさんケーキが送られてくるさ」

「おおおおおおっっ!」× 14
「さすが、9号、あったまいーい!」

「うん、だから、心配はいらないよ」


ケーキ不足の心配は霧散し、氷の国の氷河の仕事も完成して、氷の国には平和が戻ってきました。

けれど、この平和が長続きしないところが、氷の国の氷の国たるゆえんです。
氷の国の氷河石化事件は、実は、もっとずっと大きな事件の単なる予兆に過ぎなかったのでした――。






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