「氷河、石の国にはいつ着いたの? ここ、とっても綺麗なところだね。どこか見て来た?何か食べた? 買い物とかした? まだまだいっぱい名所があるんだって。氷河も一緒に見てまわ――」 再会できた嬉しさで、合体瞬は、畳みかけるように氷の国の氷河に話しかけてきます。 いつもなら決して、合体瞬の言葉を遮るようなことはしない氷の国の氷河でしたが、今ばかりは話が別。 「瞬っ!」 「なぁに?」 今の氷の国の氷河には、とってもとってもとーっても気になることがあったのです。 「五体は無事か !? お、おまえ、あいつに何かされなかったか !? 」 「何かって、なに?」 罪のない瞳をして尋ねてくる合体瞬に、氷の国の氷河は一瞬言葉を詰まらせました。 それは、氷の国の氷河には、なんとも答えにくい問いかけだったのです。 「そっ……それは、つまり、その〜、その……ナニかだ……」 「ん〜……。ナニか、ね。うん。色々してくれたよ」 合体瞬は、そう言って、にっこり。 にっこりされてしまった氷の国の氷河の顔は、真っ青と真っ赤の間を超特急で行ったり来たりです。 「なななななななな〜っっ !? そそそそそれは、つまり、ナニかされてしまったということなのかあぁぁぁーっっ !! 」 氷の国の氷河の頭の中は、想像が創造した妄想でいっぱいになってしまいました。 そして、自分の作りだした想像でパニック状態に陥った氷の国の氷河は、へろへろへ〜っと、その場にへたりこんでしまったのです。 「氷河ったら、大丈夫?」 「あ、あ、あ……」 大丈夫なわけがありません。 氷の国の氷河にとって大切な大切な──何よりも大切な――、そして、こんなに近くにいながら夢と希望と憧れでもある合体瞬が、他の男に色々ナニかされてしまったというのに、氷の国の氷河が平気でいられるはずがないではありませんか。 自分には合体瞬はもったいないと思うことと、だから他の男に奪われてもいいと思うこととは、全く別のことなのです。 すっかり人生に絶望してへたり込んでしまった氷の国の氷河の前にしゃがむと、合体瞬は、氷の国の氷河の顔を覗き込んできました。 そして、氷の国の氷河に尋ねました。 「氷河は何がそんなに心配なの?」 「何がって……ナニが……」 「何も心配することなんてないのに。氷河は、僕を信じてくれてないの?」 「これは、信じてれば済む問題じゃ……」 「僕は、氷河が必ず迎えに来てくれるって信じてたよ」 「瞬──」 にっこり笑って、けれど、その大きな瞳にとても真剣な色をたたえて、合体瞬は、もう一度、氷の国の氷河に尋ねました。 「氷河は、僕を信じてくれないの?」 その表情があまりに可愛くて、とってもとっても可愛くて、可愛すぎたものですから、氷の国の氷河は、なぜだか泣きたい気分になってしまったのです。 「し……信じてるさ。俺がおまえを信じなくて、誰を信じると言うんだ……! だがな、お前は可愛くて可愛くて、世界でいちばん可愛くて、多分宇宙でもいちばん可愛いから、良からぬ考えを持った奴に無理矢理……なんてことを考えると、俺はもう、どうすればいいのかわからなくなって……」 こんなに可愛い合体瞬が──多分、宇宙でいちばん可愛い合体瞬が──、自分を信じていると言ってくれているのです。 これが泣かずにいられるでしょうか。 「だから、そんな心配はしなくていいんだよ。何か危ない目に合ったら、僕は氷河を呼ぶから。僕が、『助けて、氷河』って氷河を呼んだら、氷河はどこにいても、何をしていても、どんな場所にでも、僕を助けに来てくれるでしょ」 「もももももももももちろんだ」 「氷河が助けに来てくれるって信じてるから、僕は大丈夫。ね?」 「そそそそそそそそそ……そうだな」 「そうに決まってるよ! さ、立って、一緒に石の国観光ツアーに行こうよ」 「よし! 行こう」 合体瞬に差しのべられた手を、氷の国の氷河はしっかりと握りしめました。 小人たちのコマネズミのような機敏な動作も、お絵描きソフトと高機能OS搭載の最新型パソコンのCPUのように俊敏な思考回路も言語能力も、9号のお利口さもない合体瞬。 けれど、合体瞬には、小人たちとは違う種類の、強い愛の力が備わっていたのです。 |