それから。 納品直前になって、氷の国の氷瞬城の中庭に放置されたままになっていた、例の100畳大タペストリーはどうなったか、気になるでしょう? 実は、それでなくても、梱包準備をしている時に氷の国の氷河が巻き込まれて、たくさんのシワやほつれができてしまっていたところに、何日も氷瞬城の庭で雨ざらしになっていたせいで、結局、氷の国の氷河は、100畳大タペストリーを作り直さなければならなくなってしまったのです。 もちろん、氷の国の氷河は、めげることなく、小人たちの笑顔や、氷の森の動物たちの親切や、まぶたの裏にくっくりと刻まれた合体瞬の姿をエネルギーに変えて、ひたすらちくちくちくちくと刺繍針を運び続けました。 そんな仕事くらい、小人たちや合体瞬を失うことに比べたら、ちっとも辛い仕事ではありませんでしたからね。 そうして、再びできあがった100畳大タペストリー。 氷の国の氷河は、今度はちゃんと、合体瞬がさらわれる心配のないような特急便を選んで、配送の手続きをしました。 けれど、それが、カミュのアクエリアス絶対零度クール特急便だったからたまりません。 納品先の某王室には、カチンコチンに凍りついた100畳大タペストリーが届けられてしまったのです。 結局、100畳大タペストリーは再々度の作り直しになってしまい、その時、氷の国の氷河はまた生死の間をさまようような不運に見舞われるのですが、それはまた別の話。 いつか、運命の神様が、ちょっとでも氷の国の氷河を愛してくれる日はやってくるのでしょうか。 運命の神様に愛されることがなくても、氷の国の氷河の愛情の家計簿はいつも黒字のようですから、それはあんまり期待できないかもしれませんね。 ともあれ、氷の国は今日も平和です。 The Happy End
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