氷河の希望の星




小人さんサークルが、『地球一の大手サークル』と呼ばれるようになって、しばらく経った頃のことです。


氷の国の氷河は、一人ぽつねんと椅子に座っているだけの日々が、もう1週間も続いていました。
次のイベントまで、あと2ヶ月。
小人たちは、原稿描きの修羅場の真っ最中で、氷の国の氷河は小人たちに遊んでもらうこともできません。

氷の国の氷河にできることといえば、小人たちの夜のおやつに、ポッキーやキャラメルを買ってきてやることくらい。
小人たちの本は、なにしろ小さな小さな本なので、氷の国の氷河の無骨な手では何のお手伝いもできないのです。



修羅場で必死な小人たちを見ていることしかできない自分に空しさを覚えた氷の国の氷河は、ある夜、重大決心をしました。
すなわち、
「俺も同人誌を作るぞー!」
という、無謀この上ない決心を。


無謀ではありましたが、そうと決めたら、氷の国の氷河の行動は迅速でした。
なにせ、世間に向かって訴えたいことが、氷の国の氷河の胸にはたくさんたくさんあったのです。
ネタに困ることはありません。

氷の国の氷河は、たった2ヶ月の間に、
『愛した人は小人だった!』(A5 84ページ)
『人生を10倍哀しむ方法』(A5 120ページ)
『おたくを愛したあなたのために』(新書サイズ 100ページ)
の本を作り上げました。


そして、小人たちを肩に乗せ、氷の国の氷河は意気揚揚とイベント会場に乗り込んだのです。


けれど。
『人生を10倍哀しむ方法』なんて本が売れるはずがありません。
結局、その日の氷の国の氷河のお仕事は、小人たちのボディガード兼人員整理係。


次のイベントでも、そのまた次のイベントでも、氷の国の氷河の本はただの1冊も売れることはありませんでした。