ともあれ、そういうわけで、小人たちは、結局、ニコルの許で暮らすことになりました。

暮らすと言っても、何をするわけでもありません。

小人たちは、壺から出たり入ったりするだけ。
ユーリさんが町で買ってきたケーキを食べて、歌って、ダンスをして、笑っているばかり。

ニコルに一生懸命話しかけてきたりもするのですが、それだって、ニコルにはただの歌にしか聞こえません。



そうしているうちに――。
毎日忙しくて 気の休まる暇もなかったニコルは、いつも楽しそうに笑っている小人たちを見ているのが、段々いやになってきたのです。


人間が生きているってことは、とってもシリアスなことです。
かの徳川家康だって、『人の生きるは、重い荷を背負うて長き道を行くがごとし』なんて言っています。

生きてるってことは笑い事じゃないのです。
少なくとも、今のニコルにとってはそうでした。

なのに、小人たちときたら、来る日も来る日も楽しそうに笑って歌って踊っているばかり。
歌のような言葉も、ニコルには相変わらず理解できません。


「こんな無意味なものが、なぜこの世に存在しているんだ! 毎日毎日笑っているばかりで、仕事の邪魔になるし、可愛いだけで何の価値もないものじゃないかっ!」

ある日、お仕事のことを考えてイライラしていたニコルは、そう怒鳴って、小人たちをアヤしい壺ごと、窓からぽーん☆ と放り出してしまいました。

壺は、アヤしい笑顔を貼りつけたまま、聖域の庭に転がり、体重があってないような小人たちは風に乗ってふわふわと、聖域の石畳の上に着地しました。


そこに、たまたま通りかかったユーリさんが、事情も知らずに呑気なご挨拶。
「あら、小人さんたち、今日はお散歩? いいお天気でよかったわね〜」


それを見て、ニコルは、ふいっと部屋の中に戻りました。

きっと、小人たちを気に入っているユーリさんが、小人たちをどうにかしてくれるでしょう。
小人たちだって、毎日自分たちのためにケーキを買ってきてくれるユーリさんといた方が嬉しいでしょうし、何より、これで仕事の邪魔をされずに済むのですから、その方がいいに決まっていました。






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