1号(僕、選べない……) 2号(僕、選べない……) 3号(僕、選べない……) 4号(僕、選べない……) 5号(僕、選べない……) 6号(僕、選べない……) 7号(僕、選べない……) 8号(僕、選べない……) 9号(僕、選べない……) 10号(僕、選べない……) 11号(僕、選べない……) 12号(僕、選べない……) 13号(僕、選べない……) 14号(僕、選べない……) 15号(僕、選べない……) (どれか1つなんて、僕には選べないよ〜っっ !! )× 15 スタートラインとケーキの真ん中で、小人たちは石像のように固まっていました。 『小人たちの選ぶケーキは、1番か、2番か、3番か、4番か、それとも5番なのか !? どうした、小人たち、何を迷っている! おやつの時間はとっくに過ぎた! さあ、己れの心の欲するままに進むがいい! 本日のご注文はどちらさんだー !! 』 これが最終問題、次の心配をする必要はない! ということで、声を限りに絶叫していた氷の国の氷河も、今は沈黙を守っています。 「いっちーばん! いっちーばん!」× 202,164 「にーいばん! にーいばん!」× 202,008 「さーんばん! さーんばん!」× 202,019 「よーんばん! よーんばん!」× 202,003 「ごーぉばん! ごーぉばん!」× 202,124 「小人さんたち、1番に来て〜っっっ !! 」 「2番のケーキがいちばんおいしそうよー !! 」 「3時のおやつは3番だぜーっっ !! 」 「4番に来てくれなきゃ、私、死んじゃう〜っっ !! 」 「5番5番5番5番なんったって5番っっ !! 」 自分たちが選んだケーキの許に小人たちを引きつけようと、喉も張り裂けんばかりに絶叫していた、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちもまた、今は息を飲んで、運命の選択の時を待っています。 その時でした。 スタートラインとケーキの間でぴくりとも動かなくなっていた小人たちの体が、微かに揺れ動いたのは。 1人がぐらりと動いたかと思うと、あとは15個のドミノが倒れるよう。 「だめだ、僕には、どうしてもどうしてもどれか一つを選ぶことなんてできない……」 そう言って、1号ががくりとその場に膝をつきました。 2号「僕もできない(がくり)」 3号「僕もできない(がくり)」 4号「僕もできない(がくり)」 5号「僕もできない(がくり)」 6号「僕もできない(がくり)」 7号「僕もできない(がくり)」 8号「僕もできない(がくり)」 9号「僕もできない(がくり)」 10号「僕もできない(がくり)」 11号「僕もできない(がくり)」 12号「僕もできない(がくり)」 13号「僕もできない(がくり)」 14号「僕もできない(がくり)」 15号「僕もできない(がくり)」 「皆さん、ごめんなさいっっ !! 僕たち……僕たち、どうしてもどうしても、どれか1つなんて選べないよぉ〜。あーん、あーん、あーん !! 」× 15 やはり、小人たちに、たれたれ瞬ちゃんのケーキのどれか1つを選ぶことはできなかったのでした。 どれか1つを選ぶということは、他の4つが食べられないということ。 そんな悲しい、そんな残酷な話があっていいものでしょうか。 いいえ、そんなことは決して決してあってはいけないのです! 互いを支え合うようにして、あんあん泣き続ける小人たちに、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちもまた、盛大に貰い泣きです。 「小人さんたち、泣かないでっっ!」 「どれか1つを選べなんて無理を言った私たちが悪かったのよっ!」 「許してくれ、小人さんたち!」 「私たち、小人さんたちを泣かせるつもりなんかなかったのに〜!」 「あーん、あーん、あーん!!」× 101万318 さすがは、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたち、小人たちを愛するあまり、泣き方も小人さん泣きです。 「小人さんたち、さあ、食べて!」 「どれか1つを選ぶ必要なんてもうないのよっ!」 「小人さんたちを泣かせるくらいなら、私たち全員失格になっても構わないわっ!」 「小人さんたち、5つのケーキを全部、思う存分食べてくれ!」 「皆さん……」× 15 国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちの優しい言葉に、小人たちは大感激。 「皆さん、ありがとうっっ !! 僕たちは、皆さんに会えて本当に幸せですっっ !! 」× 15 「小人さぁぁぁぁぁーん !! 」× 101万318 どおぉぉぉぉぉん !! 小人たちのその言葉で、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちの興奮は頂点に達しました。 そして、大興奮の国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちに見守られながら、小人さんたちは、たれたれ瞬ちゃんの5つのケーキに突進していきました。 「わーい、たれたれ瞬ちゃんのケーキだーっっ !! ぱくぱくぱくぱく、むしゃむしゃむしゃむしゃ、はぐはぐはぐはぐ〜♪♪♪」× 15 「……こ…小人さんたち……」× 101万318 101万318人の小人さんフリークたちは、小人たちがケーキにむしゃぶりついている姿のあまりの愛らしさに涙ぐんでいました。 国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたちは、自分たちが失格になることよりも、小人たちの幸せな笑顔の方がずっとずっと大切だったのです。 失格になってしまったにも関わらず、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたち101万318人は皆、この結果に満足していました。 彼らは、彼らの愛する小人たちを幸せにしてやることができたのです。 これ以上の幸せがあるでしょうか。 満足そうな、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリークたち101万318人と小人たち。 彼等の様子を控え室から眺めながら、氷の国の氷河はたれたれ氷河さんに尋ねました。 「しかし、全員失格になってしまったら、この企画はここで終わりか?」 「いや。 202,164 + 202,008 + 202,019 + 202,003 + 202,124 はいくつになる?」 「へ?」 突然そんなことを言われても、氷の国の氷河は15より大きい数の足し算ができませんでした。 10分待っても答えを出せない氷の国の氷河に業を煮やして、たれたれ氷河さんは言いました。 「1010318だ! そして、第二問をクリアしたフリークの数は1010328 だった。1010328 から 1010318 を引くと、残りはいくつだ?」 「え?」 もちろん、氷の国の氷河は15より大きい数の引き算もできませんでした。 10分待っても答えを出せないでいる氷の国の氷河に同情して、たれたれ瞬ちゃんが助け舟。 「10だよ、氷の国の氷河さん。……え? てことは……」 「そうだ、あれを見ろ」 そう言ってたれたれ氷河さんが指差した先には、5つに別れたゾーンの入口の前でうろうろしている、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた10人の小人さんフリークたちがいたのです。 彼らは小人たちと同じように、どーしてもどーしても1つのケーキだけを選ぶことができなかった、真の小人さんフリークだったのです! さあ、ついに10人にまで減った小人さんフリークの数! そして、翌日の有明はコミケ日和。 果たして、第1回小人さんサイン会は、どんな終劇を迎えるのでしょうか !? |