氷の国は、もうすっかり金色です。 秋のもう一つの味覚といえば、ぶどうですよね。 小人たちは、朝からずっとぶどうの甘い香りに包まれて、おいしそうにつやつや光る紫や黄緑色や黒い色のぶどうの房を見上げていました。 ぶどうは、屋根のようになっているぶどう棚から房をたらしているので、親切な鳥さんたちが小人たちの姿を見つけてくれる可能性はありません。 小人たちは、ぶどう棚の下で途方に暮れていました。 ぶどうの甘い香りに、気も狂わんばかりになっていました。 「ぶどう、おいしそうだねぇ」 「巨峰のタルト、食べてみたいねぇ」 「デラウェアの小さな粒々で飾ったケーキって、宝石箱みたいに綺麗なんだよねぇ」 「僕、甲斐路も好きだなぁ」 「どーして、タルトのこと、トルテって言う人がいるんだろうねぇ」 「 !? 」× 14 「ど…どーしたの? なに、急に変なこと言い出したの、6号?」 突然、訳のわからないことを言い出した6号。 小人たちが不審に思って、6号に注目すると……。 なんということでしょう! 6号は、地面に一粒落ちて腐りかけたぶどうの粒の横で、真っ赤なほっぺをしてふらついていました。 そう、そのぶどうの粒は醗酵して、お酒になっていたのです。 6号はぶどう酒の香りに酔っ払っていたのでした。 「6号、大丈夫っ !? 」 と、6号の側に寄っていった他の小人たちも、次々にぶどう酒の香りに倒れていきます。 「はにゃららら〜」 「ほわわわ〜ん」 「地球が回ってる〜」 「ぶどうもまわってる〜」 ぶどう棚の陰から小人たちを見守っていた、完全装備の親切で不審な人は、ばたばたと倒れていく小人たちに大慌て。 急いで小人たちの許に駆け寄りました。 「お……おまえたち、大丈夫かっ !? 」 親切で不審な人の身体には、まだぎんなんの匂いが残っていましたが、お酒に酔っ払った小人たちは、そんなことすらわかりません。 「ぶどうはどうして回るんですか〜」 「ぶどうのタルトとぶどうのトルテを食べ比べたい〜」 「ぶどうはどーしてこんなにいい香りなの〜」 「バナナはおやつに入るんですか〜」 「おまえたち、そんなにぶどうが食べたいのか……」 1人、ぶどうに関係のないことを言っている小人も混じっていましたが、親切で不審な人は、ぶどうに懸ける小人たちの執念に負けてしまいました。 大きな籠にぶどうをいっぱい摘んで、その上に酔っ払った小人たちを乗せて、親切で不審な人は、お菓子作りの好きなたれたれ瞬ちゃんのところに出掛けていったのでした。 |