金色の英雄 再び




暑くて熱くて短い夏が終わりますと、氷の国には、氷の森が金色に染まる秋がやってきます。
真っ青だった空は薄い水色に変わって、夏の空よりも高くて遠いところにあるよう。
涼しくて気持ちのいい風が、銀杏の葉っぱを一枚一枚ふわふわと地面に落として、氷の森に金色の絨毯を敷きつめていく季節。
それが秋です。

ところで。
秋の味覚と言えば、何といっても栗ですよね。

氷の国の小人たちは、今日は朝からずっと、大きな栗の木の下で作戦会議を開いていました。
去年の秋、初めて《親切でくさい》金色の英雄さんに出会ったあの日と同じように。

(去年の小人たちの冒険を忘れてしまった人は、こちらを読んで思い出してくださいね)
(それから。今回のお話には、去年の秋と全く同じ描写が随所に出現しますけれど、そんな細かいことをいちいち気にしてはいけませんよ)


さて、そういうわけで、小人たちは作戦会議の真っ最中です。

「栗といえば──」
「マロングラッセ」
「マロンカスタードパイ」
「マロンタルト」
「モ・ン・ブ・ラ・ン〜♪」
「わーい !!!! 」× 15

会議は盛り上がっていました。
最初のうちは、とっても。

「でも、困ったね」
「そうだねぇ……」

いつもなら、こういう時には、親切な通りがかりのハトさんやツバメさんが、
『そういうことなら、私に任せてください。ちょいとつついて、実を落としてあげましょう』
と言って、小人たちに秋の実りをプレゼントしてくれるところなのですが、なにしろ、小人たちの今日のターゲットは栗。
とっても恐ろしいイガイガで鉄壁の防御を敷いている栗なのです。

たとえ親切な鳥さんが小人たちの前に現れても、その実を高い木の上から落とすのは、なかなか難しそうです。
まして、あのイガイガの中から、おいしくて可愛い栗の実を取り出すためには、器用に動く手と、イガイガを恐れない勇気とが必要でしょう。
そんな勇敢な英雄は、なかなかいるものではありません。

中においしいおいしい栗の実が眠っていることを、こげ茶色に色づいて教えてくれている栗のイガイガは、親切なようで、ちょっと意地悪。
小人たちは、そういうわけで、豊かに実った大きな栗の木の下で、途方に暮れていたのです。