小人たちの夢を壊さないために、弁解のひとつもしないで、小人たちの非難を甘んじて受け入れる氷の国の氷河。

いったい、彼はどうしてそんなことができるのでしょう。
もちろん、それは、氷の国の氷河が口下手で上手に弁解することができないせいでもありますが、でも、それ以上に。

愛が──氷の国の氷河の小人たちへの深く強い愛が、誤解を恐れない強さを、氷の国の氷河に与えているから、彼はそういうことができるのです。
小人たちが知らなくても、小人たちが気付いていなくても、氷の国の氷河の愛は、馬肥ゆる秋の空よりも高く、凍り始めた東シベリアの海よりも深く、くるみ割り器がないと割ることのできないくるみの殻よりも堅く、そして、氷の森の奥にある透明度200メートルの湖よりも澄んで美しい、真実のものなのでした。



――人間は、愛とおやつのために生きています。
それは、わざわざ改めて考えるまでもない、人生の真実です。

誰かに愛されていることに、気付いていない人はいませんか。
おやつを食べている手をちょっとだけ止めて、自分の周りをぐるりと見回してみてください。

誰かの深い深い愛が、そこにありませんか?
誰もいないと思っていても、きっと誰かが優しい眼差しであなたを見詰めていてくれますよ。

氷の国の氷河が、どんな時でも、愛に満ちた眼差しで彼の小人たちを見詰めているように。






Fin.