そんなわけで、夜も更けた深夜10時過ぎ(←小人たちは、いつも夜9時にはおねむなので、10時なんて未知の世界なのです)。
氷の国の氷瞬城・幽霊探検ツアーご一行様は、13号が白い人影を見たという場所に向かったのです。

そして、廊下の隅で幽霊が出るのを待つこと5分。

1号「なんかドキドキするね」
2号「うん、わくわくするね」
3号「ね〜、どうして電気つけないの?」
9号「明るくすると幽霊が出てこないかもしれないからね」
4号「ね、13号がユーレイ見たのってこの辺りでしょ?」
13号「えーと……確かこの辺りをふらふらしてて、あっちの方へ消えたかな」
9号「向こうは広間だね」
5号「ろ……6号。手をつなごうよ」
6号「いいけど、怖いの? 5号」
5号「ち…違うよっ! 暗いからはぐれないようにするだけだもん」
7号「僕たちも手をつなごうか」
1、2、3、4、8、10、11、12、13、14号「賛成」

9号「では、満場一致で、手はつなぐことに決定」

氷の国の氷河は、
『移動しないのに、はぐれるもなにもないだろう』
と思っていましたが、もちろん、そんなことは口にしませんでした。


そうして、更に、待つこと10分。

「出ないね……幽霊」
小人たちは、早くも退屈モードです。

「でもいるよ。僕、見たもん」
と、13号が少し意地を張った口調で言いかけた、その時!

「あれ !? 何か動いたよ!」
突然、11号が廊下の壁を指差して、叫び声をあげました。

「えっ、なになに?」
「どこ〜??」
「あそこっ! 何か黒くて大きいのがいるよ!」

見ると、確かに、そこには何やら怪しげな黒い影がぼんやりと揺れています。
小人たちは、『どきどき』と『わくわく』と『ぶるぶる』を足して3で割った気分に襲われました。
ものすごい緊張感が氷瞬城の廊下に漂います。
こんなことは、氷瞬城始まって以来の出来事でした。

けれど――。
「あれは氷河の影だよ。ろうそくの炎が揺れてるから影もゆらゆらしてるんだ。それに、怖い怖いと思ってると、何でも幽霊とかに見えちゃうんだよ」
9号が、仲間たちに、冷静この上ない解説を披露してくれたため、氷瞬城始まって以来の緊張感は一気に霧散していったのです。

「さすがは9号! 物知りだね」
「えっへん。そういうのを、『幽霊の正体見たり、カレーパン』って言うんだ」

「さっすがぁ〜!」× 13(除く、9号・13号)

9号は、みんなに褒められて、ちょっといい気分になりました。