小人さん商店街は、氷瞬城の門の前に置かれた一つのテーブルから始まりました。

提案したのは、小人たちの中で『お利口』担当の9号でした。

最初は、それは、可愛いお店屋さんごっこだったのです。
9号が、ねんごろになったリスさんからもらった木の実や、仲良くなった小鳥さんからもらった綺麗な貝殻を、通貨代わりのどんぐりで、氷の国の小動物たち(とは言え、小人たちよりはずっと大きいのですが)相手に売り出したのが最初の最初。


その木の実や貝殻を、氷瞬城見物にやってきた観光客のおねーさんたちが、面白がって買っていくようになったのです。

このお店屋さんごっこは、小人たちのお気に入りの遊びでした。


けれど。
ある日、一人の観光客のおねーさんが、どんぐりの代わりに、つぶつぶいちごポッキーを置いて木の実を買っていったことで、小人たちは俄然商売っ気を起こしてしまったのです。

氷瞬城の物置から、はしっこの欠けたままごとの食器や、まだお裁縫が未熟だった頃に氷の国の氷河が縫って失敗した帽子や上着を引っ張り出してきて、テーブルの上に並べてみたら、これがバカ売れ!

小人たちは、毎日、山のようなポッキーやチョコレートを手にして、大喜びです。
地域限定のジャイアント・ポッキーをもらった日には、嬉しさのあまり『お客様、どうもありがとう』のダンスを踊るようになり、これがまた可愛いと評判をとって、小人さん商店街の横には、丸太を積み重ねるがごとく、観光客からもらったジャイアント・ポッキーの山ができるようになりました。

お日様が沈んで店仕舞いの時間になると、小人たちは、『皆さん、今日はどうもありがとう。明日も小人さん商店街にぜひお越しください』のダンスを踊ります。
そして、小人たちが観光客に悪さをされないかと心配して、いつも商店街の横にぽつねんと座っている氷の国の氷河にポッキーの山を持ってもらうと、氷河の肩や頭に乗っかって、小人たちは氷瞬城の中に帰っていくのでした。

そのたそがれた様子がほのぼの哀れないい絵になる(?)というので、小人さん商店街がいちばんお客様で賑わうのは、閉店間際。

「小人さんたち、また明日もお店を開いてねー!」
お客様たちの掛け声で、小人さん商店街は店仕舞いになるのでした。






【next】