「え?」

小人たちは、一瞬、自分たちの耳を疑いました。

だって、あんなにおいしくて綺麗なぴーまんを嫌う人がいるはずがないじゃありませんか。
いるはずがないと、小人たちは信じていたのです。

テレビの画面では、ヒロシくんが、
「あの、しゃりっとして、味らしい味がないとこがダメなんだよなー。どーして、この世に、こんな訳のわかんない食い物があるんだか、わっかんねーよ、ほんと」
──なんて、ひどいことを言っています。


「ぴ……ぴーまんは、あのしゃりっとした感じがいいのに……」
「ぴーまんに味がないなんて嘘だよ。ぴーまんはよく噛んでると、段々甘くなって……」
「ぴーまんは、つやつやで、むっくりしてて、可愛くて……」
「ぴーまんは、とってもとってもおいしくて……」
「ぴ……ぴーまんは……!」

小人たちは、それ以上我慢できませんでした。
15人の瞳から、小さな涙の雫がぽろっと零れ落ちたかと思うと、それは、あとからあとから溢れ出て、止まらない涙になってしまったのです。

「ぴーまんが嫌いだなんてひどいー!」
「僕たち、ぴーまん、一生懸命ふくらましたのに!」
「みんなが喜んでくれるんだと思って、頑張ったのに!」
「お絵描きの時間もダンスの時間も削って、ぴーまん作ったのに!」
「大事なクレヨンで色を塗って、黄色や赤のぴーまんも作ったのに!」
「なのに、どーしてなのーっ !? 」

「あーん、あーん、あーん !! 」× 15

テレビでは、『おとーさんといっしょにピンポッキーズ』が始まっていましたが、小人たちはもう、ピンポッキーズどころではありませんでした。

みんなが喜んでくれると信じて、みんなが喜ぶ顔を思い浮かべながら頑張ってきたぴーまん作りのお仕事。
氷の国の氷河と一緒にいられる時間さえ削って作り続けてきた、つやつやのぴーまん。

それが、みんなのためになっていなかったなんて。
自分たちが必死に作ったぴーまんを嫌っている人がいるなんて。

小人たちの悲しみは、ピンポッキーズの歌のおねーさんが歌う『どろっぷすのうた』くらいでは消えそうにありませんでした。
体操のおにーさんが『みんないっしょに わんにゃんたいそう』を始めても、一緒に体操する気にはなれませんでした。

小人たちはただ悲しくて、
「あーん、あーん、あーん !! 」× 15
と泣き続けることしかできなかったのです。

「お……おまえたち、いったいどうしたんだ !? 」
事情を知らない氷の国の氷河は、大泣きに泣いている小人たちを見て、おろおろおろおろするばかり。


その日。
氷の国の氷瞬城では、小人たちの泣き声が、いつまでも絶えることなく響いていました。
そして、氷の国の氷河は、彼の小人たちが泣き疲れて眠るまで、小人たちの頭を撫で撫でし続けたのでした。