ここは、地球のうんと北の方にある氷の国の氷瞬城。 その城内の最奥にある物置の、更に奥にある秘密の場所です。 氷の国の氷瞬城にこんな秘密の場所があることを知っているのはただひとり、氷の国の実質的支配者9号だけです。 一見したところ、氷の国の氷河が使い古した空っぽのお裁縫箱。 けれど、実は、こここそが、氷の国の中枢と言っていい場所なのです。 この秘密基地に、9号は、『金庫』という名前をつけていました。 あからさまに『秘密基地』なんて言うのは、シロートのすることですからね。 日課になっている、就寝前のチェックのために『金庫』にやってきた9号は、注意深くお裁縫箱のフタを閉じると、 「ふっ……」 と、ニヒルな笑みを洩らしました。 その横顔には、ほんの少しだけ、氷の国の氷河にも仲間たちにも見せたことのない孤独の影が射しています。 9号がここで何をしているのかは、氷の国の誰も知らない超A級シークレットなのです。 秘密の仕事は、迅速に進めなければなりません。 9号は、大型コンピュータ(ケータイ電話)のフタを『よいしょ、よいしょ』と一人で開け、メール着信履歴ボタンの上で飛び跳ねました。 今日のメールの着信記録は1件。 このケータイ電話に、9号への秘密の依頼人からの極秘メールが届くことになっているのです。 |