いつも一生懸命な小人たちのお団子屋さんには、ドラマもあります。


岡っ引きのお仕事がない時には、岡っ引き氷河もお団子屋の手伝いに来て、主にレジと店掃除のアルバイトをしていました。
岡っ引き氷河は、お団子屋の仕事そのものより、小人たちの様子の方が気掛かりでしたから、
「まいどあり〜。またお越しください〜」
なんて気の抜けた挨拶をして、受け取ったお金をちり〜ん☆ と床に落としてしまったりもします。

すると、すかさず、9号の叱責が飛んでくるのです。

「お客さんがくだすったお金を取り落とすなんて、なんて失礼なことするのっ! びしっ★」
「あわあわあわわ;;」
「おじさんが心を込めてお団子を作ってるように、お団子のお代にはお客さんの心と苦労が染み込んでるんだよ! お客さんは、汗水たらして働いて手にしたお金を、このお店に払ってくれてるんだ! 感謝の気持ちを忘れちゃいけないよ! 4文銭を落とす者は4文銭に泣くっ!」
「はいっ!」
「お金は大切に扱うことっ! 道で拾ったお金は50文まではネコババ、それ以上は、落とし主が困ってるかもしれないから、番所に届ける!」
「はいはいはいっ」
「返事は1回!」
「はいっ!」

たかが団子代の4文銭のことで、こんなやりとりを聞かされたら、江戸っ子はそれだけで、
「おっ、見上げた心意気だね、気持ちいいねぇ」
てなもんです。

しかも、小人たちと岡っ引き氷河のドラマ(?)はそれだけでは終わりません。
ちゃんとメロドラマ要素もあります。

失敗続きで溜め息をついている岡っ引き氷河のところに行って、ついさっきまで厳しい顔をしていた9号は言うのです。

「氷河……。僕がこんなきついこと言うのも、早くお金をためて、長屋の雨漏りを直して、 そして、僕たちが少しでも早く所帯を持てるになりたいからなんだ。ぼ……僕のこと、嫌いになったりしないでね……」
「馬鹿な心配はするもんじゃない。そんなこと、もちろん、俺は、わかってるさ」

岡っ引き氷河が優しい目をして頷くと、さすがの9号の目にも涙。
「氷河……」

そして、9号の涙は、『心は一つ』の小人たち全員の涙になります。
「氷河―っっ !! あーん、あーん、あーん !! 」× 15

貧乏な暮らしの中で、愛と優しさと希望を忘れず、必死に生きている小人たちと岡っ引き氷河に、お客さんたちはほろり☆

もちろん、岡っ引き氷河も仕事に精を出します。

時々、宿下がりの大奥のおばちゃんたちがお店に寄ってくれることもあって、その見物客なんかもやってきます。


とにかく、小人たちとおじさんのお団子屋さんは、大繁盛しておりました。







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