そんなこんなで大繁盛の小人たちのお団子屋。

小人たちが安いお給金でも頑張れるのは、やり甲斐のある仕事、強い目的意識、仲間たちの存在、そして、お昼休みに食べさせてもらえるおじさんのお団子があったからでした。

9号の指示で、それは1日1串と決まっていましたが、小人たちはその1串を毎日楽しみにしていたのです。



ある日のこと。

「わーい、やっとお昼の時間だー!」
「お団子、お団子♪」
「今日はみたらしだってー!」
「おじさんのお団子、ますますおいしくなってきてるから楽しみ〜vv」

店先に『お昼休み』の札を出して、転がるように厨房に駆けてきた小人たちの前を横切る怪しい人影がありました。

「え?」

岡っ引き氷河とおじさんは、お店の方でお皿や湯呑みの整理をしていましたし、その2人以外に普通サイズの人間はこの店にはいないはず。
その人影にびっくりした小人たちは、けれど、すぐに、それ以上に驚愕すべき事実に気付きました。

お団子が消えていたのです!
働く小人たちのいちばんの楽しみ、いちばんのエネルギー源のお団子がっ !!


「どっ……どろぼーだーっっ !! 」
「団子泥棒―っっ !! 」
「あーん、僕たちのお団子がーっっ !! 」
「ひどいーっっ!」
「どーしてなの〜っっ !! 」

「どーしたんだ、おまえたちっ !? 」

小人たちは、慌てて厨房に飛び込んできた岡っ引き氷河にすがって、わんわんわんわん大泣きです。

1日1串と決められた大切な大切なお団子がなくなってしまったのですから、それも無理からぬこと。

岡っ引き氷河は、喉も張り裂けんばかりに泣き叫ぶ小人たちの頭を、ひたすら撫で撫でしてやることしかできませんでした。
どう考えても、岡っ引き氷河は、自分が悪者を捕まえる岡っ引きなんだという意識が欠如しているようですね。







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