長崎に向かう船の上で小人たちが目を覚まし、ついに運命の歯車が回り出した頃。 花のお江戸の湊に、“哀れ”と“不幸”と“不運”をその背中に背負い込んだ、ひとりの孤独な男の姿がありました。 「捜しても、捜しても──湯屋の隅から隅まで捜しても、江戸中の甘味処をしらみつぶしに捜しても、俺の小人たちは見つからなかった……」 桟橋にたたずむ銭形氷河の背中は哀愁を帯びて物悲しく、その姿は孤独に包まれていました。 髪結い床に行くお金がないので、適当な紐で大雑把に結いあげているポニーテールが、寂しく潮風に揺れています。 (小人たちがいないと、俺には生きている甲斐もない。いっそ、このままこの海に身を投げて死んでしまった方が……) 銭形氷河は、そんな暗いことまで考え始めていました。 けれど、その時──。 『無駄使い、はんたーい !! 』 『9号〜、僕、甘い世界から出たくないよぉ〜!』 とてもとても微かにでしたけれど、銭形氷河には忘れようもない懐かしい声が、潮風に乗って、彼の耳に運ばれてきたのです。 ──それは、愛の奇跡だったのでしょうか。 銭形氷河の耳には、はっきりと小人たちの声が聞こえたのです。 どこにいるのか、その場所はわかりません。 実は、銭形氷河は方向音痴な上、地理音痴でした。 けれど、愛の本能と暮れ始めた空に輝く一番星が、銭形氷河に、彼の進むべき道を指し示してくれたのです。 「あっちだ! あっちの方向に小人たちの気配がする!」 愛の道標が指し示してくれたその先に向かって、銭形氷河は、ざっぶ〜ん★ と江戸湾に飛び込みました。 世をはかなんだわけではありません。 生きるために! 生きていくために、銭形氷河は泳ぎ出したのです! 泳ぎは、もちろん、バサロ泳法。 目指すは、長崎か、よおろっぱか。 幾千里の大海原も、小人たちを求める彼の心には、何の障害にもなりえません! 行け、銭形氷河! 進め、銭形氷河! 君の行く手に待ち受けるものは愛だけだ! じゃんじゃかじゃかじゃかじゃんじゃかじゃかじゃか♪ (↑ 『海の銭形氷河』前奏) 水平線の終わりには、小人たちがいるのだろ〜 誰も見ない小人たちを 氷河は捜し求める 広がる海の彼方から 小人が呼ぶというのだろ〜 4文銭を胸に抱いて 遠く旅立つ ひとり〜 ゴーゴー氷河 ゴーゴー氷河 ゴーゴーゴーゴーゴー氷河〜♪ 続きます!
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